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「お待たせ、響紀」
「おー、じゃあ行くか」
ライトブルーの軽自動車の助手席に実留が乗り込み、シートベルトを締めたのを確認してエンジンをかける。
「実留、じいちゃん今日どうするって?」
「昨日またゴルフ行って腰痛めちゃったから、お墓参りはまた今度行くってさ」
「そうか。じゃあ帰りに何か美味いもんでも買って持って行ってやるか」
隣でそうだね、とくすくす笑いながら嬉しそうに実留が頷くのを見て俺も小さな笑みを零した。
ーーあれから、数年が経った。
実留のじいちゃんはあの後すぐに一命を取り留めて、目立った後遺症も残らず今でも元気に暮らしている。
心配性の実留は家を出た後も度々じいちゃんに連絡を入れたり、仕事帰りに家に寄ったりと相変わらずの仲だ。
俺の父さんは実留のじいちゃんとはゴルフ仲間で、休日にはよく二人でゴルフ場に出掛けていると母さんが楽しそうに話していた。
俺と実留はというと、同じ大学を卒業し小洒落たマンションに二人で暮らしている。
実留は持ち前の明るさを生かし、老若男女、全ての患者から好かれる優しい看護師になった。
そして、あの誕生日からずっと俺達は恋人だ。
実留が生きる意味と命があるという幸せを見つけても、あの日の言葉は変わらない。
『俺の為に生きろ』
生きて、一緒に沢山のものを見て、沢山泣いて、沢山笑って、数え切れないほどの思い出をこれからも二人で作っていく。
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