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「最近、なんか、うまくいかない事が多くて、だから、イライラしてて、そのせい、かも……ごめん」
酔って緩んだ頭で、なんとか適当な言葉を紡いだ。
マクは、はぁっと深いため息を吐いて、それからグラスのワインを飲み干した。
「ジェボミがイラついたら、俺に当たるんだ。そうなんだ」
まっすぐに、冷えた瞳で俺を射抜く。
もちろんただの口から出任せだし、そんな事ないし、そんな風に怒らせたかった訳じゃない。
だけど、俺の言葉をそのままに受け止めたマクが本気で怒ってるのが分かった。
「ジェボミは、ほんとに俺のこと要らないんだね」
「えっ?」
怒ったマクが、爆発するのかと思った。だけど、肩を竦めて自虐的に笑う。怒ってるんじゃない。
傷つけた?
「部屋戻るね」
そう言って、ふいに立ち上がる。
俺の前を通り過ぎるその手を、咄嗟に掴んだ。
「えっ」
マクが驚いて、俺を見下ろした。
「いらなくない」
「えっ?」
「いる」
マクの手を握って、力を込める。
「ジェボミ、なに言ってんの?」
「わかんねえ」
俺がそう言って頭を抱えたら、マクは、またソファの隣に座り直した。
「ジェボミ、変だよ、どうしたの?」
「わかってる。ごめん」
「だから。そんな謝るの変だよ。俺のことが気に入らないんじゃないの? 嫌いなんでしょ」
「ちがう、そんな訳ないだろ」
「だって」
「マク、おれ、混乱してる」
手を握ったまま、そう告げる。
「何に混乱してるの?」
俺のほうに体ごと向けて、ソファに座るマク。
「飲み過ぎた?」
そう言って笑う。
まだ、笑ってくれるんだ。
ハグしたり肩を組んで歩いたり、友情の延長で、そんなこと数え切れないくらいしてきた。
なのに、マクの手をこんな風に握ったことはなくて。力任せに掴んだままの手を、マクは振り解かない。
俺を見捨てない、優しい奴。
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