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第4章 Netflix
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「ブッ」
収録が終わって楽屋を出ようとしていたら、近くにいたベムがスマホを見て思いっきり噴き出した。
「なに見てんの」
「ううん、ううん」
そう首を振りながらも、堪えきれなくなったように笑ってる。そんなに面白いなら見せろって、画面を覗いたら。
「あ」
「や、別に僕がイジってる訳じゃなくてね、アガセがね、」
ベムはあたふたと取り繕うように言葉を並べて、俺を見る。
「ああ、分かってるし」
「ちょ、ヒョン怒ってる?」
「怒ってねーし」
「ほんと?」
「ああ」
「なら、ちょっとお腹見せ、」
「ああっ!?」
「や、ごめんなさい、嘘ですうそ!」
そう言うと、きゃっきゃとはしゃぎながら、前の方を歩いているマクの元へ駆け寄って行った。
マジで、ほんと。
活動ももう終盤だ。
練習と並行して引っ越しを終えて、部屋を片付けたり、ダイエットしたり、色んな収録に参加して。
目まぐるしく日々は過ぎ去って。
それで、全部なかったことになって気持ちもスカッとするはずで、腹の肉だって消えてなくなるはずだった。
だけど、どれだけ忙しくしてても、見ないふりしてる心の中にあるモノも、腹の肉も、都合よく消えてなくなることはなくって。体も心も、なんとなく重いままだ。
突然少し前の方で、キャキャキャッと、甲高い笑い声が響いた。廊下ですれ違い様のスタッフさんが驚いて振り返ったほどだ。
笑いを爆発させてるのは、あいつだ。それも、ベムに差し出されたスマホを見て笑ってるし。
被害妄想じゃないと思う。
さっきベムが見てた画像は、俺の腹の出たみっともないスクショだった。それを見て笑ってるに違いない。
こっちにだって言い分はある。
踊ってる最中だし。パステルカラーは太って見えるし。だから……だから…そうは思っても、なんだか冗談にして笑い飛ばせないモヤモヤが、また心の中に積もってく。
ワールドツアーまでには絶対、体も作るし、心も晴れ晴れと、全部吹っ切って見せるんだ。
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