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ふわっと、髪に触れる感触で、驚いて顔を上げた。
「あ、寝てんのかと思った」
まだ眠そうなくぐもった声でマクが言う。
「おはよ、何時?」
「さあ……まだ早い」
「なにしてんの?」
目を手の甲で擦りながら、俺を見上げる。
「んー、見てた」
「なにを?」
「お前のこと」
「え? こわ」
そう言って、くつくつ笑う。俺だって怖い。
「ジェボミ」
「ん?」
マクが俺の手の甲をとんとんと、叩く。
「酔い、覚めた?」
「ん」
「なら、聞くよ」
「え? 今?」
「うん」
薄暗い部屋の中。
まだ寝そべったままのマクはボソボソと呟く。
「もう話したくないなら、いいけど」
「ううん、話したい」
その言葉を遮るように、答えた。きっと、時間を稼いでタイミングをはかっても、何も変わらない。
「ちょっと待って、起きる……あ、腰痛い」
「ごめん、ソファ柔らかいから」
「だから、昨日から謝りすぎだし。大丈夫、ちょっと座ってれば治るよ。ほら、ジェボマ」
「あ、うん」
俺はマクが叩いたソファの隣に、おずおずと腰掛けた。
「あのさ」
「うん」
「あの……」
向かい合って、じっと真顔で見つめられると、突然怖さが増して。言葉に詰まってしまう。
「ん?」
「あのさ。あの」
「うん」
いくら見つめ合っても、マクの心は透けてはこなくて、ただ怖くなって逃げ出したいような気持ちになって。
「いいんだよ、無理して話さなくても」
首を傾げて、俺を気遣うように言う。
このまま時間をかけても、なにも良くならないって、自分が一番良く分かってる。
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