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《那月》
電話を切る。
あれ?
水が落ちてる?
おかしいなぁ、雨漏りかな?
天井を見上げて、目を瞬かせた。
僕の涙って事はわかってた。
わかってて知らん振りした。
認めちゃいけない。
認めたら、守谷さんに会いたくて会いたくて、家まで行ってしまいそうだ。
わかってる。
僕は単なる知り合いで手の掛かる子供、それだけだって事。
それだけでもいい、と思ってた。
気にかけてもらえて、僕なんかに嬉しい事いっぱいしてくれる人で。
運が良かったら、スーパーで会える人だけでいいって。
それなのにずるいよ。
守谷さんは、どうして僕がして欲しい事わかるの?
電話交換したけど単なる儀礼で、掛かってくる訳ないと思ってたのに。
嬉しかったけど、電話番号はお守りだ、って思ってたのに、いとも簡単に掛けちゃうなんて。
僕が心配なんだって、誤解しそうになる。
そんなはずないのに。
考えてたら、落ち着いて来た。
守谷さんは優しい人だから、単なる知り合いの子供にも心配してくれる。
でも、それに甘えちゃダメなんだ。
お父さんみたくお母さんみたく鬱陶しがられて、邪険にされるから。
約束を守ろう。
僕が僕にした約束。
冬休みで学校に行かない、ってことは10溜まらないってことでスーパーに行く回数も減る。
その方がいい。
そうでないと、僕は莫迦だから甘えてもいいんだ、って誤解する。
有頂天になる。
そんな事はあるはずないのに。
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