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#1_感情
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「なぁアーサー」
「何だ」
「これは…どういう体制なんだよ」
「…うるさい、ちょっと黙ってろ」
恋人であるアーサーが今日は何故か朝から機嫌が悪かった。しかもその怒りの矛先は俺らしい。
問いただしても別に、と返答があるだけで詳しくは答えてくれない。
そのくせ休憩時間になると俺の腕を引っ張って人のいない場所まで連れていき、キツく抱きついてきたりした。時間めいっぱい使って。
別にここ最近でそこまで怒るような喧嘩をしたわけでも無い。だから尚更機嫌の悪い理由が分からなかった。しかも怒っているとはいえ距離を取るわけでもなく、逆にいつもより近い。謎が謎を呼ぶばかりだ。
そして今現在。
アーサーは俺の肩に顔をうずくめるようにして立っていた。夜遅く明日もあるため、丁度寝ようかと思ったときだった
「何か…怒らせること、したか、?」
いつもだったら大きめに突っかかる俺も今回ばかりはなるべく労わるように声をかけた。
「……なんで、急に?」
やっと絞り出した言葉もなるべくアーサーを傷つけないようにと細心の注意を払った。きっと沢山考えてくれたのだろうから。
……アーサーから反応はない。
また何か考えているのだろうか。この質問は……今日のアーサーの行動とも関係があるのだろうか。
「……やっぱり、何でもない。もう遅いしな、寝よう」
「は、ちょ…っ」
勝手に離れていこうとするアーサーの腕を必死に掴む
ここで終わらせるわけにはいかない。
ここまで考えて必死になって絞り出した言葉を聞いたあとでやっぱりいいなんて言われて、あぁそう。で返せる奴が何処にいると思ってるんだ。
「ちゃんと、話そう?」
この時瞬時に振り向いたアーサーの目には何処と無く不安があった。更には目頭が潤むように……泣きそうに、なっていた。
俺の恋人 アーサーは恋愛経験というものが極端に少なかった。いや、皆無といってもいい。
顔立ちから、モテることはあってもそれで踏みとどまっていた。
その為、俺と付き合いはじめた時もどこか覚束無い様子で、ライバルから恋人への転換の仕方がわかっていないようだった。
最初こそ、抱きしめようものならしゃがんで逃げられるし、キスしようものなら腹に打撃を食らうしで散々だった。こんなんじゃいつになっても恋人らしいことは出来ないなと落ち込むまでに。
しかし俺の努力が報われたのか、最近はやっとのことで一般的なカップルのような行動を取れるようになってきた。
手を差し出せばとって握ってくれる。顔を近づければ目も閉じてくれる。
前みたいに俺に邪険な目を向けることは殆どなくなり、アーサー自身から甘えてくれることもたまにだがあった。それが本当に嬉しくて嬉しくて。
そんなことがあって、俺が浮かれすぎていたのかもしれない。
それ故に生まれたすれ違いが、今回の騒動であった。
「あぁ…なるほどな。つまり嫉妬、かぁ」
「しっ、と、?」
「俺がシスターとか環とかと話してたら、どんな気持ちになったんだっけ?」
「む……よく分からないが、こう…心臓のところが、刺されたみたいに、いたかった」
ここで笑顔になるのは少しばかり最低な行為かもしれないがどうしても笑みが浮かんでしまう。
しかしアーサーにそれがバレて「真剣に悩んでいるんだぞ」と怒られてしまった。
「アーサー。嫉妬っていうのは、今言ったみたいに恋人とかが自分以外の人と話したりしてるのを見るのが嫌だって思うことなんだよ」
アーサーは俺が最近、シスターや茉希さん達と話している機会が多かったからか、不安になっていたという。何しろ同性だ。頭のお馬鹿なアーサーでさえそういったことを考えるのも無理はない。
「そ、うなのか?悪いこと、?」
「全然。逆に嬉しいよ。まぁ、アーサーに嫉妬させちゃったのは悪いと思ってるけどさ。」
今度こそ正真正銘の笑みがこぼれる。
アーサーは上手く理解出来ていない様子だったが、少しして「そっか、シンラが喜んでくれたなら、それでいい」と笑った。
それがどうしても可愛く思えて、ほんの一瞬触れるだけのキスをした。
「んな、っ……急にするのは良くないぞ、!」
口調では怒っているようにも読み取れるその言葉。
「そんな顔で言われてもなぁ」
頬を真っ赤に染め、まだ慣れきっていないキスをされたアーサーは本当に愛おしいと思う。
「何を取ってもお前が一番だよ。」
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