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【誕生日】1.
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『なんだか最近、幸せ過ぎて怖いなぁ』
なんて、他人が聞いたら呆れられそうなことを真面目に思う自分に桐島は苦笑する。
プライベートの本宮は、とにかく桐島を溺愛していたから。
ただひとつ。
言いたくても言えない“願い”はあったが。
今日は平日だったが、桐島は本宮から誘われ、よく行く個室完備のチェーン店の居酒屋で向かい合わせで酒を酌み交わしていた。
時々、本宮から手を握られたり、足を絡められたりして
『ファミレスでいちゃつく高校生みたいだ』
なんて苦笑しながらも、幸せに浸る。
お腹もいっぱいになり、程良く酔ったところで、本宮から問い掛けられた。
「久弥、もうすぐ誕生日だろ?
せっかく土曜日だし。
何か、欲しい物とか行きたい場所とかある?」
「え?
急に…、そんな事言われても…」
『確か、前に次の日曜日は親戚の結婚式が入ったと聞いたから、遠出はムリなはずだし…。
プレゼントを強請るのも、なんか…』
突然の質問に戸惑いながらも、酔った頭が“願いを言ってしまえ”と囁く。
桐島が口ごもっていると、本宮が再度問い掛ける。
「何でもいいから、教えて?」
「あ~、えっと…」
本宮の笑顔に誘われるように、“願い”を口にする。
「…息子さんって、土曜日は塾に行ってるんですよね…?」
「ああ、土曜日なら昼過ぎから夕方はいないよ?」
「…樹さんの部屋…、行ってみたいです」
口にした瞬間、やはり後悔した。
本宮はバツイチで今は桐島と付き合っているとはいえ、子持ちだ。
しかも中学三年なんて、多感な時期。
いくら不在の数時間とは言え、家にあがりたいなんて…。
『困らせた?
冗談にして誤魔化さないと…!』
一瞬のうちに桐島が焦っていると、本宮の嬉しそうな声音が聞こえてきた。
「了解。ちょっと遅くなるけど、ウチで昼飯食べるか?」
「いいん…ですか?
樹さんの家に行っても…」
不安げな桐島に、本宮は“寧ろ何が問題?”とでも言うように答える。
「もちろん。
金曜は久弥のトコな。
で、土曜はちょっとゆっくりしてからウチに行こう?」
本宮の笑顔が、桐島を安心させた。
桐島は自然と笑みをこぼした。
言ってはいけないと思っていた“願い”は、口にしてみたら驚くほど呆気なく叶った。
向かいに座る本宮に頭を引き寄せられ、額にチュッと優しくキスをされた。
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