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『そんでさ、今日の奴らはマジ凄いんだって』
「へぇ」
『お前だって聞いたことくらいあんだろ、"Mental connection"ってバンド。今メジャーデビューに一番近いって言われてるインディーズバンドだよ』
「…へぇ」
『お前なぁ…さっきからへぇしか言ってねぇじゃねぇか!今日のチケットだってとるのに一体どれ程苦労したか…っ』
「…そりゃあ行けなくて残念だな」
『ホントだよ!!あんのクソ店長さえいなけりゃ…』
電話越しに友人が歯軋りをしているのが分かって、インディーズバンドオタクである彼は余程そのライブに行けないことが悔しいのだと思った。
『だーかーら!ほんっっっとに不服なんだけど、お前にそのプレミアムなチケットを譲ってやったんだ!それもタダで!俺の分も楽しみまくってこい!そんで帰ってきたら感想聞かせろ、いいな?』
キーンと耳鳴りがしてしまう程大声でそう言われて、蒼司は顔を顰めながら思わずスマホを耳から遠ざけた。
そして新たな小言を言われないように、分かったから、と溜息混じりに返す。
最終的に嵐のように捲し立てた友人は、更に二、三言言ってから漸く気が済んだのか一方的に電話を切った。
全く身勝手な奴だと思いながら、貰ったチケットを手提げ鞄から取り出すと記載された会場の住所を確認する。
今朝チケットを渡されたばかりでろくに時間も確認せずに電車に乗った蒼司は、開場までまだ数時間あることに気付き大きな溜息をつく。
「流石に早すぎたな…」
友人がチケットを押し付けながら、早く行って前の方取っといた方が絶対いいから今すぐ行け、と念を押してくるものだからつい何も考えずに早く来てしまった。
これからどうしよう、と暇潰し出来そうな所をスマホで探していると不意に足元にワインレッドのブック式カバーがつけられたスマホが落ちるのが見えて顔を上げる。
どうやら少し前を歩く少年が落とした物らしく、蒼司は慌ててそれを拾うと人にもまれつつ後ろから声を掛けた。
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