アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5.
-
「みんなお待たせ!Mental connectionです」
ステージの中心に置かれたスタンドマイクの前に立ったチハヤが爽やかな笑顔を見せながらそう言うと観客のバイブスが一気に上がる。
「初めましての人もそうじゃない人も、みんなで盛り上がっていこう!早速だけど、みんな…Are you OK?」
流暢な英語で早々に煽りを入れると観客はそれに歓声で返して、慣れていない蒼司は叫びにも似たその大声に驚いてワンテンポ出遅れつつも何とかその熱気の波に乗った。
「いい返事!…じゃあ一曲目ーータイムラプス」
チハヤの曲振りが終わり、入れ替わりでマイク前にケイが立つ。
しんと静まり返った会場。
徐ろに目を伏せたケイがマイクに手をかけて大きく息を吸い込み発した一音目。
ーー蒼司の背中に電撃が走った。
あまりの衝撃に指先ひとつ動かせなくなる。
ーーなんだ…、なんなんだ…この声…。
まだどこか幼さの残るテノールが反響し、蒼司の鼓膜を揺さぶり続けた。
圧倒的な歌唱力で一瞬にして観客を虜にするとその声に共鳴していくかのように他の楽器の音が合わさっていく。
それは、今まで聞いたどの音楽よりも心情的で夢幻的なーー偏に"音楽"という概念だけで留めてはいけないような、そんな気がした。
言うなればそう、これは"Mental connection"という名の一つの物語だ。
気が付けば一曲目が終わり二曲目、三曲目と続くと一回目のMCが入った。
「はーいみんなー!ちゃんと楽しんでくれてるー?」
ヤトの問い掛けにバイブスが既にマックスになっている観客の叫びにも似た歓声が響き、会場全体が熱気で揺れる。
「うんうん、楽しんでくれてるみたいだねー!俺も嬉しいよ!…と、いうわけで!第一回MCはメンバー紹介!初めての人も、ちゃんと俺達の名前と顔、覚えて帰ってね」
そう言ってヤトが熟れた様子で器用にウインクを決めると女性ファンの黄色い声がとぶ。
「んじゃまずは俺からねー。俺はベースのヤト。ヤト様〜でもヤト王子〜でもみんなが好きなように呼んでもらって構わないよ」
語尾に星マークでもついていそうな軽いノリに観客は湧く。
「おいヤト、その巫山戯た敬称はなんだ?新手のギャグか何かか?」
後ろからそう鋭いツッコミを入れたのはドラムのユウだった。
「えー?ほらほら、俺王子様って感じするでしょ?」
「しない。王子っていうならチハヤとケイの方が余程王子っぽいよ」
「えっユウちゃん酷くない??」
「酷くねぇよ。つーか、さっさと続きやれ」
「ユウちゃんが先に言い出したのに…俺の扱い酷いよねーほんと…。まぁそんなところも好きだけどっ」
「…ヤト」
「………ハイ」
先程のやり取りより低い声は明らかな怒気を含んでいてヤトはヤバイ、というような顔で正面を向く。
すると観客から呆れたような笑いが零れた。
蒼司はなんなんだ、と思わず呆然とするがこの二人のやり取りは日常茶飯事らしく、メンバーもファンの皆も恒例イベントのように扱っているような雰囲気だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 19