アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7.
-
「あーもう…ほら、次いこ次。ユウは?」
チハヤはケイの身体を離し、優しく頭を撫でながらステージ後方にいるユウに問い掛けるとユウはんー、と腕を組んだ。
「好きなところなぁ…そう急に振られても出てこねぇよ」
「なぁに言ってんのユウちゃん。ケイのこと好きすぎて、この前だってお疲れ気味のケイの為に、家からかなり離れた所にある有名なケーキ屋さんまで態々バイク走らせて、何が好きか分からないからって全種類買ってきたりしたのに?」
「っな…!」
「一昨日とかもケイが心配だからって、大学行ってるチハヤの代わりに学校まで迎えに行ったりさ?ケイが体調悪い時とか一番心配して大丈夫かな、俺何すればいいかな、ってオロオロしまくって部屋の中ウロウロしてたりさ?それなのにケイにありがと、って一言言われただけで茹でダコみたいに耳まで真っ赤にして…、」
「わー!!うるせぇうるせぇッ!!」
突然冷静だったユウが叫びながらライドシンバルとハイハットを掻き鳴らす。
ヤトは態とらしく耳を塞いで、茶目っ気たっぷりに片目を瞬かせた。
「なぁに?ユウちゃん」
「それ以上言うんじゃねぇ…!それとも強制的に口を利けないようにした方がいいか…?」
明らかな殺意を含んだ目にヤトはビクリと肩を震わせる。
これは本格的にヤバいやつだと悟ったヤトはユウからサッと目を逸らして、誤魔化すように笑った。
「あ…ははは、うん、まぁこれでみんなユウちゃんがケイのことどのくらい好きか痛いほど分かったよね、うん。いつもMC長すぎってリーダーとケイに怒られてるんで、そろそろ締めます!この後も一緒に盛り上がっていこうねー!」
そう言って強引にMCを終わらせるとチハヤが呆れの溜息をつきながら、フッと柔らかい笑みを浮かべた。
「全く仕方ないやつだな。…よし、じゃあ次の曲いこうか。ケイ、準備はいい?」
チハヤがケイの肩に手を置いて、確認するように再度耳元に唇を寄せて問い掛けるとケイはすぐ近くにあるチハヤの顔を見て、小さく頷く。
フードとキャップのツバによって影がかかっていた顔が微かに笑っているように見えた。
「じゃあ皆いくよーーカンタレラ」
そうして、再びチハヤの曲振りと共に始まったライブ。
一度曲が始まればMCのちゃらけた雰囲気は一体どこにいったのかというほど、一人一人が圧倒的な実力を見せつけてくる。
それが憎らしくも格好良いと思ってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 19