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「うぁ〜…頭痛い…、めっちゃガンガンする…」
「自業自得だな。酔い潰れるまで飲んだお前が悪い」
そう言って、まるで自分の物のように弥斗のベースの弦を弾く悠治に弥斗は分かりやすく顔を顰めて耳を塞ぐ。
「ちょ、ユウちゃんやめて。響く、響くから、頭に」
「精々その空っぽの頭に響かせとけよ。目ぇ覚めるだろ?」
「ユウちゃん鬼畜〜…」
後日寝込む恵愛を除く三人はいつものスタジオを借りて昨日の反省会、という名の雑談会を開いていた。
完全に二日酔いにやられてしまっている弥斗が大人しいことをいいことに、悪事を働く悠治に顔を青くしながら溜息をつく弥斗だったが、ふと何かを思い出してあ、と声を上げる。
「そーいや鈴ちゃんは大丈夫なの?熱出て寝込んでるんでしょ?」
「あぁ、普通の風邪っぽいから大人しくしてたら大丈夫だと思う。今回のライブ新曲も多かったし、色々気張ってて疲れたんだろうな」
「鈴ちゃん作詞も担当してるしねー。高校もあるんだからもっと俺達に甘えてくれればいいのに」
そうは言っても恵愛的にはもうかなり甘えているつもりで、そうやって甘やかしたい大人達の中では恵愛は遠慮している聡い子どものようにしか見えなくなるのだから不思議である。
不服そうに口を尖らせる弥斗を横目に、悠治は口を開く。
「恵愛の場合は人より違う神経使うから普段から疲れやすいんだろ。ライブの時なんかは特に、補聴器も取らなきゃいけないから不安も多いだろうし。ただでさえ持病もあんのにさ」
他人事のようにサラリと言っておいて内心は恵愛のことが心配で仕方がない悠治は、寝込む恵愛の姿を思い出して何処か落ち着かないようにソワソワとベースを鳴らし始めた。
「まぁそうだよねー…、…あのさ、二人とも」
パイプ椅子に腰掛けながら突然声音を重いものに変えた弥斗に二人は顔を上げた。
お調子者の弥斗が真面目な顔をする時は極めて稀で、そういう時は決まって自分達の今後を大きく左右する何かが起こる前触れであることを二人はよく知っている。
それを持ってくるのも弥斗本人であることに間違いはないのだが。
「それを承知で言うんだけどさ。…やっぱり、キーボード欲しいなって思って」
「バンドメンバーにってことか?」
悠治の問い掛けに弥斗は小さく頷いた。
「鈴ちゃんいない時にこんな話って思ったんだけど、ほら、鈴ちゃん他人苦手だし変なプレッシャーとか不安を与えたくなくて。それに鈴ちゃんには色んな事情があるから、例え逸材を見つけたとしてもその人が鈴ちゃんのこと受け入れてくれるとも限らない。もしその人が反Mental connectionみたいになっちゃったら、鈴ちゃんのことバラされる可能性だってある。そうしたらMental connectionを…、鈴ちゃんの居場所を奪うことになっちゃうかもしれない。…それでも、やっぱり鈴ちゃんにはキーボードが必要だと思った。ドラムとかギターとかベースとかのザ・バンドって感じのカッコイイのも好きだよ。でも、鈴ちゃんの良さを生かすなら叫ぶより、声を荒らげるより、優しく語りかけるような、囁くような歌を歌って欲しいなって。…まぁ、これは俺の願望だけどね」
茶目っ気混じりに肩を竦めて笑った弥斗だったが、色々なことを考慮してこの話をしようという結論に至ったのだろう。
キーボードが増えればその分Mental connectionとしての可能性が広がることも確かだ。
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