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元は恵愛の歌声に感銘を受けた智早がバンドをやらないかと誘ったことが始まりだった。
珍しく無計画だった智早の勧誘に負けた恵愛だったが、その後バンドメンバーを集めるうえでボーカル担当である恵愛の持病と難聴が弥斗と二人を対立させた。
然し、弥斗と一悶着起こし折れかかった智早の心を修復したのも、最終的に弥斗と悠治がバンドに加入することとなったのも、全て恵愛の歌声のお陰であった。
恵愛の歌声が凝り固まっていた彼等の心を動かし、夢を叶える一筋の希望となったのだ。
だからこそ三人は恵愛を敬愛し、恵愛を支えていくことを誓った。
"Mental connection"という名の心の拠り所をつくり、誰よりも愛しい彼を守るために。
然しながら弥斗の言う通り可能性の拡大というには随分リスキーな賭けである。
呼吸器系の持病にはストレスや極度の緊張、疲労等にもよって発症する発作も多く、常に万全でいられる保証など皆無に等しい。
現に体調を崩すことの多い恵愛は、ライブ前日まで寝込んでいるどころか、リハーサルにすら顔を出せないこともあった。
恵愛に感化された初期メンバーはいいが、新規メンバーを加えるとなると、その相手が恵愛と、そしてMental connectionの存在理由を受け入れてくれるかどうかが一番の難点である。
Mental connectionはただ素直に音楽を楽しみ、高みを目指すグループではないのだから。
結成理由は兎も角オーディション等をすれば実力派のアーティスト達は自然と集まってくるであろう。
現段階で既に陽のあたる場所に立っているMental connectionに加入することが出来れば将来は安泰、と思っている人間も多いはずだ。
まだ名の知れない無名バンドに入るより余程現実的である。
然し今の彼等に必要なのは技術と経験を持ったプロ意識の高い人間ではなく、バンドに興味があり、どんなことでも受け入れられる寛大な心と覚悟を持った人間だ。
それは三人ともしっかりと理解していた。
智早と悠治も弥斗の意見に同意はしたものの肝心のそんな人材をどこから連れて来るのか、ということに三人は頭を抱える。
「オーディションはダメ…ってすると知り合いの中から探すしかないけど」
「んー、キーボード出来る人いたかなぁ。初心者を俺達のグループに入れるのは流石に無理があるだろうしね」
「なかなか難しいな」
三人寄れば文殊の知恵、とは言うがそう簡単に良い案が出てくる訳もなく、結局その件は一旦保留となりこの日は解散となった。
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