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「キーボードねぇ…いっそのこと俺がやるか?んで新しいベーシスト探す??いや、いやいやいや。ダメダメ、ベースはバンドの主軸だし、ドラムのユウちゃんと息が合わなきゃ曲がめちゃくちゃになっちゃう。智早がキーボードやったら鈴ちゃんのフォローがしにくくなるからな…それに智早は作曲もあるからキーボード練習してる暇もないし……はぁ、困ったなぁ」
あの話をしてから数日後、常連と化している楽器屋でブツブツと独り言を呟きながら弥斗は店内を流離っていた。
考え事をしたい時など決まって弥斗はこの店に出没する。
ここの店長とは弥斗がまだMental connectionに入る前、違う人とバンドを組んでいた時からの知り合いで何かと世話になっている。
「やっぱキーボード出来る新しい人探すしかないかー。出来れば、真面目で順応能力高くて気が利いて容姿も良くてピアノ経験十年以上の好青年がいいんだけどなぁー、なんて〜…」
誰も聞いていないことをいいことにそんな現実味のない願望をダダ漏れさせていた弥斗の耳にーー突然、キーボードの軽やかな音が届いた。
咄嗟にバッと顔を上げた弥斗はキーボードコーナーに近付き、そっと棚の陰から覗き込む。
そこに居たのは、大学生位の男子二人で一人は今時風な明るい色の髪型にラフなパーカースタイル、もう一人は短めに切りそろえた染めていないであろうダークブラウンの髪を無造作に、且つお洒落に纏めていて服装は大人しめで薄手のロングカーディガンを羽織っている。
然しよく見れば後者の彼はネックレスをつけ両耳に幾つかピアスを開けていたりと、完全な真面目タイプではないようだった。
そうは言うものの、一般的にイケメンと言われる類の人間であることは確かな容姿。
全体的にシンプルではあるもののそれがかえって彼の良さを引き立てている。
そして極めつけは彼の手元にあった。
ーーキーボードを完璧に弾きこなしている。
たかが電子機器に適当に触れているだけではあったものの、その指の動きは素人の弥斗から見ても美しいと思った。
「お…おぉ…?」
弥斗は彼等にバレないように小走りでレジに向かうと、店の奥へと入ろうとしていた若い女性を呼び止めた。
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