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「ちょ、ミサキちゃんミサキちゃん」
「あ、弥斗君いらっしゃい〜」
弥斗の存在に気がついたバイトの渡辺ミサキは人懐っこく笑う。
弥斗はミサキを手招きすると声を潜めながら先程の彼に視線を投げた。
「ね、あの子誰か知ってたりする?」
「え?」
「あの、キーボードのところにいる子!」
「あ〜蒼司君?」
「蒼司?」
ミサキの言った名前を復唱すると彼女はコクリと頷いた。
「うん、姫宮蒼司君」
「よく来るの?」
「そうだねー蒼司君のお母さんがねピアニストなんだ。店長のお知り合いなんだけど、それもあってか偶にああやって友達と来るんだよね」
ここの店長は相変わらず顔が広いなと思いつつ弥斗は更に身体を乗り出す。
「ピアノ上手いけど、彼もやってるの?」
「そうそう。お母さんがピアノ講師もやってたりするから小さい頃からお母さんの教えでピアノに触れてきてるみたいだよ。コンクールとかでも何度か賞とかとったりしてるみたい」
「性格は?」
「え、えぇ性格?うん、普通にいい子だよ。礼儀正しいし、お母さんが結構抜けてるところが多い人だから蒼司君はしっかりしてるし」
弥斗はあまりの衝撃に数歩後退ってワナワナと体を震わせる。
「容姿良し、性格良し、ピアノも上手い…これは優良物件…かなり完璧…いやもうこの上ない逸材…!」
「あの〜…弥斗君?」
不思議そう、というより最早危ない物を見るかのような訝しげな視線を送りつつ弥斗の顔を覗き込んだミサキの両手を弥斗は唐突に握り締めた。
「ミサキちゃんありがと!愛してるよ!それじゃあね!」
それだけ言い残して嵐のように立ち去っていった弥斗にミサキが後ろから制止の声を投げるが弥斗の耳に届いてすらいなかったようで、ミサキは意味が分からず溜息をつく。
「…弥斗君ってば、今度は男の子にナンパするつもりなのかなぁ…」
强間違いでもないが色々と問題がありまくりの疑念を抱きながら、残されたミサキは一人首を傾げていた。
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