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2.本当の君
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「名城せーんせ」
霜田くんと一緒に帰るのは流石にまずいので、霜田くんには先に帰ってもらった。
「和田先生。お疲れ様です、仕事終わりですか?」
「まあね。名城先生部活動指導終わったの?」
彼は国語教諭の和田先生。
人が良くど天然な性格なので付き合いが楽な同職種の人だったりする。
「ええ、まあ」
「名城先生って生徒に人気だよな〜。俺なんて、生徒にいつも馬鹿にされてばっかり…」
「いえいえ。それ、好かれている証拠だと思いますよ俺は」
他愛もない話をしながら頭に先ほどの霜田くんの姿がふっと思い浮かぶ。あーあー、まだ幼い年して、本当に色気満載だったな…あの表情(カオ)といい、体といい…。
「名城先生?」
「ああ、いえすみません。次の部活動の内容を少しばかり考えていました。」
「ああ、なるほどね〜!真面目だなぁ先生は〜」
…ううん、次は霜田くんにどんなことしてあげようかなぁ?
ー
「修学旅行?」
「はい」
週に1度、周りにバレないように十分注意しながら、俺と霜田くんは2人でデートをしている。デートと言っても特別すごいところにはまだあまり連れて行ってあげられていないが。
いつものように助手席に座る霜田くんは、もじもじとしながら俺に話した。霜田くんはこう言うのも今更だが、綺麗な顔立ちをしている。これなら、女子生徒にもそこそこモテるだろう。
「そうか、もうそんな季節か」
もう10月だもんなぁ。修学旅行って、懐かしすぎる響き。最後に学生として行ったのは何年前だったろう。
「せ、先生って、付き添いで来たり…しないんですか?」
何で修学旅行に行くんです、なんて話をしてきたんだろうとは思っていた。…が、そういう事か。
「どうかな。俺副担も今年は特にしてないから…多分、行かないと思う。」
すると、霜田くんの表情があからさまに落胆したように見えた。…ああ、なんて罪な男なんだ俺は。こんなに心の純粋な子を、こんなことで悲しませてしまって。…バチが当たるな。
「けど、お土産話楽しみにしてる。帰ってきたら、たくさん聞かせてよ」
フォローするようににこりと笑って優しく彼を見る。霜田くんは俺の顔を見上げて、ようやく沈んでいた顔をふわりと綻ばせた。…はあ、その顔俺以外に誰にも見せるなよ。と心の中で釘を差す。
それから、修学旅行の時が来て、霜田くんと1週間ほどの間会えなかった。1週間なんてすぐに経つ、と思っていたが、…予想していたより空虚だ。
霜田くんと会えない日々が、こんなにつまらないなんて。
「ふぅ…」
美術室で1番後ろの席に座って、ひとり、頬杖をついてため息をつく。…早く帰ってこい。
俺はその時改めて自分の気持ちに気付かされた。俺は彼のことが、間違いなく好きなのだろう。
「おかえり」
1週間後、霜田くんが帰ってきた。
「先生、…た、ただいま、戻りました。」
霜田くんは相変わらずのようだった。かあっと俺の姿を前に顔を赤く染めてうつ向く霜田くんは、今すぐ襲ってくださいと言っている羊のようにしか見えない。もちろん、彼にそんなつもりはないとは知っているが。
「あの、これ…お土産です。…先生とお揃いのストラップ欲しいなって思って、俺」
「え?」
ご当地の何らかのマスコットキャラクターのストラップを差し出してくる霜田くん。…離れてる間も俺のこと考えてくれていたのか。
「…霜田くん」
「…はい、わ、わかってますよ…!お揃いのストラップなんて付けてたらまずいし、だから困りますよね…!せっ先生の好みとか俺わかんないし、きっと先生の好みじゃないだろうなと思いながら買ってしまっ」
ぎゅう、…と、この場で今彼を抱きしめられるものならどんなに良かったか。ここはあいにく真昼間の学校の吹き抜けの廊下。
…さすがの俺も大胆なことはできない。代わりに、彼の右手を俺は手でぎゅっと握った。これなら、万が一にも見られても変なことをしているふうには見えない。
「…え、と、先生…?」
「霜田くん、それ以上は2人きりの時に。」
きょとんとして困惑している霜田くんには、きっとわからない。俺が今、どれだけ嬉しいかなんて。俺が今、どれだけ君に対する思いを必死の思いで押さえ付けているかなんて。…まだまだ子どもだな、霜田くん、…君は。
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