アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嘘の約束
-
「……なぁ、オト」
「うん?」
「昼間にさ、猫に会ったろ?
みんな、おれのことを手下だなんだって言うもんだから、おれ……ちょっと悔しかったんだ」
「悔しい?」
「うん。
おれとオトって、そんなに釣り合ってないのかなって。
やっぱり、ひとと猫が一緒にいることは、おかしいことなのかなって。
おれはオトと同じところに立ちたいって、ずっと思ってたから」
「……うん」
「さっき、よーこが言ってたよな。
おれとオトは、同じものを見ているかのように会話してるんだって。
それ聞いてさ……思ったんだ。
おれ達って、嘘をつき合ってるんだな……って」
「嘘を?」
「そう。
だって、同じものを見てるなんて嘘だろ。
お前は猫で、おれは人間なのに。
そしておれは今もお前に嘘をつかれていて、おれもお前に嘘をついてる。
お前はおれを化かしていて、おれはお前を本当に人間であるかのように、振る舞っているから」
「……なるほどね。
それならおれは、今でも、嘘をつくことに囚われたままってことか」
「うん、そうだよ。
だから……オト、これからもおれに、嘘をついて」
「……は……」
「ずっと、おれのことを騙し続けて。
おれのために嘘をついてよ」
そうしたら、おれもお前のために嘘をつくから。
一緒にいるための嘘を。
「……嘘をつけって……そんなこと言うの、先生とミコトくらいだよ……」
「……駄目?」
おずおずと問うと、オトは困ったように笑って、おれを抱き締めた。
「本当……ミコトって、馬鹿だ」
「馬鹿で悪かったな……」
「いーよ。
おれ、嘘をつく。ミコトのために、嘘、つくから」
「……うん」
「でもね、おれの言うことは信じて。
ミコトにあげる言葉に、嘘は乗せたくない」
「うん。おれも、嘘は言わない」
「ありがと……
ミコト、大好き」
「……おれも……」
……好き。
「好きだよ、オト」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 73