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不吉な単語
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「…………猫狩り?」
こたの言葉に、おれは眉をしかめる。
冬休みが明けて、初めての講義の日だった。
その単語の意味は知らないものの、明らかに不吉そうな響き。
「うん、そう。
まぁ噂だし、有り得ないとおれは思ってるけど」
こたもまた、珍しく真剣な顔で。
「うちの街に、回覧板が回ってきたんだ」
「回覧板?」
「うん。
"猫を飼われている方は、夜中に猫を外出させないでください。"」
「……は? それだけ?」
「それだけ。
なんかおかしいなぁって思って、ネットで調べてみたんだけど、以前にもそういう案件がいくつかあったらしくてさ……」
飼っている猫が夜中出かけたまま帰ってこない。
いつも餌を与えていた野良猫がぱたりと姿を見せなくなった。
そういうことが立て続けに起こる。
それを警察や役場に相談すれば、注意を喚起する回覧板が回されることもあるらしい。
そういうものには大抵、薄暗いところで猫狩りという単語が交わされる。
「誰かが猫を捕まえてるってこと?」
「うん」
「なんのために」
「んー、三味線の皮に使うとか、なんかの研究の実験施設に送られたりとか。
結構お金になるらしいけど、よく分かんない」
「よく分かんないって……」
「だって、調べてたら気持ち悪くなっちゃったんだもん。
……でも、愛護団体が保護のために野良猫を捕獲するってこともあるんだって。
そのための回覧板なのかもしれないよね。間違って飼い猫を捕まえないようにっていう」
「うーん……でも、理由が書かれていなかったのが気になるな」
「そうなんだよねぇ。
……でもさぁ、お金になるからって、あんなに可愛い猫ちゃん達に酷いことするひと達が本当にいると思う?
おれはいないと思うなぁ」
「……こた……」
可愛い=愛されるものって、そんな法則が成り立つなら、誰もひとを殺したりしないよ。
「お前って、色んな意味ですごいよな……」
「にゃにそれ? 褒めてるの?」
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