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「げ、また?」
思わず眉間にシワが寄る。
台所で歯磨きをしながら、スマホをいじってるときだった。
「どーしたの?」
後ろから首に腕を回して、覗き込んできたオトにスマホの画面を見せる。
オトはきょとんと首を傾げた。
「なにこれ?」
「占い。
おれ、二日連続最下位でさ……」
いくらなんでも酷くないか?
このアプリ天秤座に恨みでもあんのかなぁ。
「なーんだ、くだらない」
「悪かったな。
オト、誕生日いつ?」
「そんなの覚えてるわけないでしょ。
何年前の話だと思ってるの?」
「あー、100年生きてるんだっけ」
「そうそう」
つーか、100年も生きる猫は、猫って言えるのかな。
もう妖怪の類なんじゃ……
「なに考えてるの?」
「別にー。
口ゆすぐから、どいてろよ」
「はーい」
口の中をすすいで、歯ブラシを洗って、コップに立てかける。
その間、オトは黙って後ろの壁に寄りかかっていた。
「……なんかおれに言いたいことでも?」
シンクの水滴を拭きながら、おれは振り返らずに問いた。
「……大学って楽しい?」
「え?
あー、まぁ、楽しいよ。こたもいるし」
「誰、それ」
「忘れたの?
一回会ったろ」
「ふーん。
じゃあ、バイトは?」
「バイトも、楽しいよ。
実は店長がさ、姉ちゃんの婚約者なんだ。
すごく良くしてもらってる」
「へー」
「……」
「……」
「……で、なんでそんなこと聞くわけ?」
振り返って、オトと向かい合う。
オトはつまらなそうな顔で目線を逸らした。
「なんとなく、気になっただけ」
「ふーん……」
なーんか、引っかかるんだよな。
「ミコト、そろそろ学校行かなくていーの?」
「あぁ、もうこんな時間か。
オトは? 今日も隣町に行くの?」
「んー、多分」
「なんだよそれ。
まぁ、無理はすんなよ」
「そーだね」
「……」
「怪しいんだよなあ」
食堂でこたと昼食を食べながら、おれはぼやいた。
どうしても、今朝のオトの態度が引っかかってならない。
「なにが怪しいって?」
「んー、ちょっとな」
「ん、怪しいと言えば!
猫友達のおばさん情報なんだけどな、一昨日の夜、いつもの場所に餌をやりにいったら、何故かその日は野良猫ちゃんが現れなかったらしいんだ。
代わりに、赤い空き缶がポツンと不自然に置いてあったって」
「はぁ……」
「で、なにかあったのかって心配してたら、その子、昨日の朝には元気な様子で会いにきてくれたんだってさ」
ということは、空き缶の存在を知っていて、猫はその場所に現れなかった?
オトが言っていた、空き缶に近付かない作戦はそれなりに上手くいってるのかもしれない。
「これって、例の猫狩りとなんか関係あると思う?」
「……どうだろうな」
「怪しいよねぇ」
「つーかお前、おれ以外にも友達いたんだな。おばさんだけど」
「あーっ、おばさん馬鹿にすんなよ!
おばさんネットワークはすごいんだぞ!」
いや、友達いない部分は否定しないのかよ。
「え、もしかしておれおばさんと同じカテゴリー?」
「んにゃ!
おーじは猫大好き同盟だからな! 特別!」
「あーそう、それは良かった」
こたはいまだに、おれが猫大好きだと思ってんだな……
本当、この子は猫に関わることだと常識が通じない。
「おいおい、反応薄いぞー!
本当は嬉しくて泣きそうなくせに!」
「は? なんでだよ」
「だって君、おれのこと大好きだろ〜?
この前言ってたもんな?」
「はぁ? そんなこと言った?」
「言ってた言ってた!
酔うと本音が漏れるって言うし!」
酔ってるときかよ……
つーかいつの話だ。
「でもなぁ、おーじは酔うと面倒くさいんだぁ。
すっごい絡んでくるし」
「……それは申し訳ない」
「にゃはははっ!
また呑みにいこうな!」
「ははは……」
今度呑むときは、ほどほどにしよう……
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