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結論
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おれにあの話をすると決めるまで、色々な葛藤があったと思う。
きっとその後のおれの態度だって容易に予測出来ていたはすだ。
それでも、オトは話してくれた。
だから……おれも。
「オト、」
そっと名前を呼べば、青い眸がこちらに向く。
「……昨日の話なんだけど」
「うん」
「おれ、たくさん考えたんだ。オトがいなくなったときのこと。
オトがいなくなったらおれはどうなるんだろう、どう生きていけばいいんだろうって」
オトはただ、小さく相槌を打つ。
おれはゆっくりと続けた。
「そんなことを考えてる内に、だんだん訳わかんなくなっていって、もう頭の中ぐちゃぐちゃだった。
……でもそれじゃ駄目だって、やっと判ったんだ」
顔を上げて笑ってみせる。
無理に作ったものじゃない。もう、迷いはないから。
「おれ、今の生活が好きだよ。
お前と一緒にいられてすごく嬉しい。
聞かなかったフリなんてするつもりはないけど、これからもお前と、今まで通り過ごしたいって思う。
だから……もう悩むのはやめる。
オトもさ、おれに気なんか遣わなくていいから」
「……」
「な?
……大事なこと、ちゃんと話してくれてありがとな」
「……うん」
力が抜けたように笑うオトに、おれは手を伸ばす。
腕を広げたオトの手に自分の手を絡ませ、そっと唇を触れ合わせた。
短く名を呼ばれ、一度離れた唇がまた重なる。
唇を軽く食み、隙間から舌を滑り込ませる。
暖かいものが喉から胸へじんわりと広がっていく。
しっかりと手を繋いだまま、オトはおれを見つめて、柔らかく微笑んだ。
「……ミコトは、強いよね」
「え?」
「正直ね、もっと時間が要ると思ってた。
あんな話……理解してくれっていう方が無茶でしょ。だから、時間が解決してくれるのを待つつもりだったんだ。
こんなに早くミコトが結論を出してくるとは思わなかったから、少し驚いた」
その言葉に、おれは苦笑を返す。
「おれ一人だったら、ずっと悩んでただろうな」
「誰かに話したの?」
「……お前の言うとおり、おれって、意外と愛されてる」
きょとんとまばたきして、オトは微かに笑った。
「ま、ミコトのことを一番愛してるのはおれだけどね」
「じゃなきゃ困るけどね」
「ふふ。……愛してる、ミコト」
「おれも愛してるよ」
見つめあって、二人して吹き出した。
「口に出すのと思ってるのは違うね」
「愛してるって思うか、普段?」
「たぶん、もっとこんがらがったこと考えてる」
「愛は重いなぁ」
「大丈夫、押しつぶしたりしないから」
「くれぐれもな」
にやにや笑いながら、オトの首に腕を絡める。
オトの手がそれぞれ腰と首に添えられ、覆いかぶさるように唇を重ねた。
ゆるゆると背中をてのひらが這う。
腰を引き寄せ、ぴったりと密着させると、唇から離れた舌をのど仏に絡め、鎖骨を辿り、首筋を舐めた。
首から肩にかけての厚いところに歯を立てて、吸い付くように食む。
「つよく噛んだら怒るぞ」
苦笑して言うと、んー、と鼻にかかった声が返ってくる。
なんとなく頭を撫でてやると、腰を抱いていた手が背中に回り、胸が詰まりそうなほどぎゅうっと抱き締められた。
八重歯が肩に食い込み、そこから軽く痺れが広がる。
思わず身構えたが、オトは強めに噛んでは、歯形を舐めたり皮膚を吸ったりするのを何度か繰り返すだけで、噛みつく気はないようだった。
生ぬるい吐息と、唾液の水音とを耳元で感じるのは妙にじれったい。
「あのさぁ〜……」
「んー?」
「それ、なんか意味あんの?」
いじけた言い方になったのは仕方ないと思う。
おれが不満げなのに気付いたのか、オトは噛むのをやめて顔を覗き込んだ。
「なんか、舌で触ってると安心するの。
キスと似たような感じ?」
「はあ」
「ミコトもやる? いーよ、ほら」
「え、いや、おれは別に……」
「ちょっと強く噛むと気持ちいいよ。
それとも、おれの口の方がいい?」
「……」
おれがもごもごと唇を動かすのを見て、オトの目が少し細くなった。
そして、答えを促すように首をかしげてみせる。
おれは上目遣いにオトを睨んだ。
「……ずるいぞ、そういうの」
オトはくすくすと楽しそうに笑った。
「ミコトは腰抜かしちゃうくらい、おれとのキスが好きだもんね?」
「別に、そういうわけじゃない」
「ふーん。じゃあ、そういうことにしといてあげる。
だから、ね……キスして?」
猫なで声で囁く。
誘惑に抗えるはずもなく、おれはオトの頭を抱き寄せて、唇を重ねた。
「は、……っ……」
溶ける。蕩けていく。
口の中から喉を抜け、からだ中を満たしていくその、快感。
……バレてるってわかってるよ。
だけど、キスが気持ちよすぎて腰が抜けるだなんて、認めたくないだろ?
「ん……っ」
ふ、と目が合う。
キスの合間に、オトが息を零して笑った。
「っ、なに……?」
「んーん」
「オト、……ん」
冷たい手が頬をくすぐる。
両頬を包み、首筋を撫で、髪をくしゃりと乱す。
手を伸ばして同じようにやり返すと、くすくすと笑う震えが伝わってくる。
そうしてじゃれ合いながら、何度も唇を重ねるうちに、ごんっと床に頭を打った。
「あ」
「あー」
「ははっ……」
「布団敷く?」
「ん」
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