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アネモネ
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「お前には失望した。もう二度と俺の前に現れるな。」
そう言い放ち、僕に背を向け、遠ざかって行くのは僕の大好きな人。
誤解だから、待ってと伸ばした手は振り払われ、一切見向きもされなかった。
きっかけは一か月前、一人の転校生が来たことだった。
転校生は宮星 結羽(みやほし ゆう)くんという名前で、すごく可愛らしい人だった。
結羽くんはすぐにクラスの人気者になって、結羽くんの周りにはいつも人がいた。
そんな中、結羽くんに気になる人ができたという噂が流れた。
結羽くんの周りにいる人達は、結羽くんに本当なのかと問いつめていた。
その噂が本当だったのか、結羽くんが気になっているのは三年生の龍崎(りゅうざき)先輩だという噂が次に流れた。
龍崎先輩は弓道部の主将で、他人にも自分にも厳しい人だ。
でも本当は優しい人で、人一倍努力家だと僕は知っていた。
そんな龍崎先輩は弓道も成績も優秀なうえ、他人にも厳しい為、周りの人に嫌われていた。
だから僕は安心していた。
僕の他に龍崎先輩を好きになる人はいないと。
結羽くんが本当に龍崎先輩を好きなのかどうか僕には確かめることが出来なかった。
結羽くんと仲がいいわけでもないし、結羽くんの周りに人達の中に友達がいるわけでもない。
確かめる方法はなかったけど、結羽くんを見ていれば龍崎先輩が好きだと分かってしまった。
僕も龍崎先輩が好きだから分かってしまった。
今思えば結羽くんも僕が龍崎先輩を好きなのだと分かっていたのかもしれない。
今まで全然関わってこなかったのに話しかけてきたのも、数少ない友達の態度がよそよそしくなったのも、この時からだった。
僕なんかが結羽くんにかなうわけなんてないのに、僕のことを目の敵にするほど龍崎先輩を好きなのだと思った。
それから結羽くんは龍崎先輩にアピールするようになった。
でも、龍崎先輩は部活の大会で忙しいからと、全然相手にしていなかった。
あの結羽くんですら相手にされないのだと嬉しく思うと同時に、結羽くんで相手にされないのなら、僕なんかもっと相手にされないだろうと悲しくなった。
そして、龍崎先輩に見向きもされない当てつけなのか嫌がらせが酷くなっていった。
友達に避けられるのは勿論、物が良く無くなり、身に覚えのないことで先生に呼び出されることが増えた。
女手一つで僕を育ててくれた母に、迷惑をかけるわけにはいかないと相談できなかった。
それから事件が起こってしまった。
その日は珍しく結羽くんに呼び出された。
あまり人に見られたくないからと指定されたのは、屋上に続く階段の上だった。
少し警戒しながら向かうと、既に結羽くんがいて、怪しく微笑んでいた。
「君って湊(みなと)さんのこと好きだよね。」
結羽くんは僕の姿を見ると話しかけてきた。
「……うん。」
「僕さ、ずっと湊さんのこと見てたから分かったんだけどさ、湊さんって君のこと気になってるみたいなんだよね。」
結羽くんから言われたことは信じられなかったけど、少し喜んでしまった。
「それでさ、僕考えたんだけど、君に対する湊さんの評価を下げようと思って。」
結羽くんはそう言うと、僕と結羽くんの立っている位置を変え、ゆっくりと体を倒した。
階段に背を向けて立っていた僕。
そして、結羽くんと立ち位置が変わった。
結羽くんの姿が消え、下から焦ったような声が聞こえてきた。
なんとなく聞いたことある声に、これから起こるであろうことに怯えながら、階段の下をのぞいた。
そこには気を失っているのかぐったりした結羽くんと、そんな結羽くんを抱きかかえた龍崎先輩がいた。
龍崎先輩は何度も結羽くんに声をかけていたけど、結羽くんは気を失ったままだった。
そんな龍崎先輩が不意に上を向いた。
そして、僕と目が合うと軽蔑したような表情を浮かべ、目を逸らした。
それから目を合わせることなく言い放たれた言葉に、僕は絶望した。
「お前には失望した。もう二度と俺の前に現れるな。」
僕の恋は誤解で終わってしまった。
僕は悲しみから暫くその場から動くことができなかった。
アネモネ
はかない恋
恋の苦しみ
見捨てられた
見放された
湊って絶対モテてる。
いくら他人に厳しいとしても弓道できて勉強もできたらモッテモテでしょ。
まあ言及しなかったのは私ですが。
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