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プロローグ
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僕は幼い頃、父親や兄弟から毎日のように暴力を振るわれていた。
憂さ晴らし
そう言って兄弟達は殴る蹴るをやめなかった。
父親は、「汚らわしいオメガ」「王家の恥」「お前なんか生まれて来なければ良かった」
そう言って火のついた薪を背中に押し当てられたり、鞭で叩かれたり、兄弟達の単純の暴力よりも強い暴力が振るわれた。
母親は目も合わせてくれない。
唯一の救いは乳母だった。
誰も僕を見ようとしなかった、けど乳母だけは違った。
大やけどを負った俺を介抱してくれたり、躾だと言われていた暴力も、乳母は僕を庇って止めてくれたんだ。
当時の僕は何故Ωが汚らわしいのか、卑しいのか分からなかった。同じ人間で、同じ家族なのに。
本の中の家族にとても憧れを抱いていた。
一緒に食卓を囲み、他愛のない話をして笑いあって…
自分がΩじゃなければこんな隔離された部屋で1人寂しくご飯を食べることは無かったのかな…
Ωじゃなければこんなに痛い思いもしなくて済んだのかな…
αだったら、お母様にももっと愛されてたのかな…
Ωなんかじゃなければ…
お父様に宛てがわれた家庭教師や稽古にも必死について行き、今ではきちんとαとして振る舞えるようになった。
薬を飲み、万が一のヒートにも備え注射も常備していた。
幸い僕はまだヒートが来ていない。
周りのΩ達は好奇の目で周りから見られていたり、αが無理やり襲ったなんて話まで耳に入ってきた。
いつかの日に警備隊をつけて街を巡回しているときだった。
人が多く通るところで怒鳴りつける声が聞こえてきた。
「自分が有能なαだからって喧嘩売ってんのか!」
「奴隷の分際で貴族様に歯向かってんじゃねぇ!」
「劣性遺伝が調子乗ってんじゃねぇぞ!」
3対1で、1人の方は顔が傷だらけの獣人だった。
多勢の方は無傷だ…反撃してない…出来ないのか?
すると地面に座ってる顔面傷だらけの男は口を開いた。
「…俺はαだからって喧嘩は売ってないし、奴隷だからって何もあんた達に手を出してるわけじゃない。俺が劣性遺伝だろうがテメェらに何一つ関係ねぇだろ。いちゃもん付けて突っかかって来たのはお前らの方だろうが…自分の無能さを人のせいにしてんじゃねぇぞ底辺貴族が」
声のトーンを落とし言い放った言葉はその3人に更に火をつけたようで、鞭やら拳やらが降り掛かっていた。
僕はその人たちに近寄り、声をかけた。
護衛の人達の止める声を無視して
「何をしているんです?」
「っ!ハ、ハルディア様!!」
「い、いやその、言うことの聞かない奴隷に、躾をですね」
「一部始終見ていましたが、彼が貴方達に何かしましたか?一方的に彼に暴力をふるっているように見えましたが…」
「そ、そんなことはございません!!…おい、早くその荷物を運んでいけ!っそ、それではハルディア様、私たちはこれで…」
やべぇだなんだと言いながら、息巻いていた3人の貴族たちはさっさと逃げるようにそそくさと帰って行った。
地面に座ってる男は口元の血を拭い、立ち上がった。
で、でっか…僕と頭一個分違う…
「……」
「……大丈夫ですか?」
「オメガがアルファの中に入ってくんな」
それだけ言うと俺の横をすり抜けた。
「あ、の!」
後ろを向けばもう男はいなかった。
助けたのにあんな言い方しなくても…
でもどうして俺がオメガだってわかったんだ?
どこからかした甘い匂いを嗅いだ後、少しの熱っぽさを感じつつその日は帰宅した。
護衛の人に怒られたが、彼が心配だった僕は後悔はしていなかった。
無事だといいんだけど…
この出会いが、あんなことになるなんて今の僕には知る由もなかった。
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