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コンプレックス8-ノワールside-
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俺はアグリ家の長男として生まれた。
両親が劣性遺伝子を持っていたため、黒豹の俺が生まれた。
両親はこれが原因でいじめられるのではないかと俺をとても心配したが、俺を産んでくれたことに感謝をしているし、劣性遺伝だろうがほかと色が違う、ということで特別感もあった。
だから周りに何を言われたって気にしなかった。
俺に対して何かを言うのであれば、だが。
「落ちこぼれ貴族だからお前は劣性遺伝なんだよ。恨むなら両親を恨めよな」
今までは俺に対しての僻みや妬み、暴言を言われてきていたのにある日通っていた学校のいつも俺につっかかってくる人間がこう言ってきた。
この一言で俺の中の何かが切れた。
何故腹を痛めて俺を産んだ母親を恨まなければならない?
どうしていつも頑張って働いて来てくれる父親を憎まなければならない?
落ちこぼれだろうがなんだろうが、俺はこの両親の所に生まれてきて幸せだ。何も不満はない。それでいいだろう?
どうして人間たちは周りと比べないと生きていけないんだ?
なんで他を下に見て、自分を持ち上げないと暮らしていけないんだ?
色んな思いが混じり、初めて他人に手をあげた。
子供同士の喧嘩だ、ということで収束がつき相手の家族は謝りもしなかった。
母親はずっと頭を下げて謝っていた。
俺が悪い訳じゃないのに、先に喧嘩を売ってきたのは相手だろ?
「いい?ノア、相手が悪くても先に手を出してしまったらこっちが負けなの。だから暴力じゃなく、言葉で相手を言い負かしなさい」
ふふっと微笑みかけて俺に諭すように言ってきたのを覚えている。
笑顔で何怖いこと言ってんだと当時は思っていたが、確かに拳より精神的ダメージを負わせた方が効くなと今だからこそ思う。
「獣人の私たちは人間より強いのは当たり前なんだから、突っかかってきたがるのよ。ほら、弱い犬ほどよく吠えるって言うじゃない?」
「それ子供の俺に言う言葉じゃないよね母さん」
「いいのよ、知っておいて損は無いもの。それにねノア」
「本当に強い人は弱いものをいじめない、な…」
母さんと父さんが亡くなってから5年。
今日は2人の命日だ。
墓参りに行けるほどの自由さは無いが、ふと母さんが言っていたことを思い出した。
「ノワール、何独り言言ってんだ?気味わりぃぞ」
「悪い、懐かしい言葉を思い出した」
同じ隷属のネロと今仕事をしていた。
荷物の運搬作業だ。
体がでかく体力があるのが俺とネロだったため、ここへと配属された。
「何思い出したんだよ」
「死んだ母親の言葉。本当に強い奴は弱い奴をいじめないって確かにそうだなって思って」
「改めてそう言われると確かに一理あんなそれ」
「弱い犬ほどよく吠えるとも言ってたな。俺が子供の時に」
「どんな教育受けてんだお前」
面白い両親にこの子あり、か。と何故かひとり納得していたネロだった。
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