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第2話
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初めの違和感は暖かくなっても手放さないカーディガンとマフラーだった。
『余命は、あと一年です。』
言葉は残酷だ。
それは形となって僕たちの首を絞めるのだから
「って、いわれても実感わかねーよなあ」
「……」
独り言みたいに呟いた波瑠
診察室では波瑠のお母さんがお医者さんと話していた。
僕はなぜ一緒にいるのかもわからない
ただ、暇ならお前も来いよと波瑠に連れられて行くと信じたくないそんな宣告聞かされた。
正直、頭が追いつかない
波瑠が死ぬ
あと一年で
なんで、波瑠が、なんで
頭に浮かぶ言葉は堰が決壊したかのように溢れる。
と、
こつん
頭に小さな衝撃
小突かれたのか、いつもは叩くのになんでこんな時だけ優しいの
「なんで宣告された俺よりお前の方が死にそーな顔してんだよ」
「だ、だって……」
「ばーか、あと一年もあるんだぜ?後悔がないように過ごしゃいーんだよ俺は」
なんで波瑠はそんなすんなり受け入れられるの
無理だよ、僕は波瑠みたいに強くない
僕にとって波瑠は、家族よりも大切で初めての大切で
何よりも、誰よりも……
幼い頃から冬に生まれた僕は、村の疫病神だといじめられていた。
両親はそんな僕を哀れに思ってか人目を避けた。
ほとんど日の当たらない倉庫みたいなところで
小さい頃のほとんどを過ごした。
お母さんはよく僕に謝った、ごめんなさいと
お父さんは僕と目を合わせなくなった。
そんな僕の救いは波瑠だった。
皆よりも遅れた勉強は波瑠が教えてくれた。
村のどの子よりもかっこよくて綺麗な波瑠だけが僕を村の疫病神じゃなくて、ただの僕としてみてくれた。
「ゆき!」
波瑠が僕を呼ぶ時だけ
僕は僕だった。
僕が生まれた理由があるとするなら、波瑠に出会うためとさえ思っていた。
それなのに、どうして
僕がいけないの
僕が、冬生まれのこの村の疫病神だから
だから、波瑠はいなくなっちゃうの?
僕が、
僕が君を好きになったりしたから……
波瑠の病気は徐々に体温が低くなって
そのうち本当に雪みたいに冷たくなって亡くなってしまう病気だった。
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