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鉄臭い匂いが鼻につく……
どれ程時間が経ったのか…治療もせずにいた…
深く切れていたと思っていたけど…そんなに切れていなかったようで…
あんなに血が出ていたのにもかかわらず、もう固まっている。
辺りは血で真っ赤なのに…死ねていないじゃないか…
幸せになるな…とは言うくせに…殺してくれないんだな……
やっぱり神様なんて…嫌いだ。
「………。」
血溜まりを眺めていると、携帯が鳴った。
身を起こし画面を見る…
「………。」
表示されている名前は…
―先生―
「………。」
携帯に触れようとする手は真っ赤に染まってて…醜い…
こんなの先生にバレたらどうなるんだろう…
呆れるだろうか…好きじゃなくなって…嫌われる…のかな…
「はは………やだ、なぁ……」
嫌だ?
何で…俺は……嫌われることを恐れているんだ…?
幸せになっちゃいけないのに…嫌われたくないとか…エゴにも程がある…馬鹿らしい…
ぱしゃりと音を立てながら血溜まりに横たわる。
殺人現場のようなこの部屋…笑ってしまうな………
ずっと鳴り続ける携帯…少し溜息を吐きながら電話を取る。
いっそのことこの状況を説明してしまおうか…
嫌われるなら…もう何だっていいや……
「………。」
―『勇間?大丈夫か?』―
胸が締め付けられる…
嗚呼…俺は………先生が好きなのかもしれない…
でもこの好きはきっと…俺を救ってくれる人が居たから…
それに縋り付こうとしてるだけなのかもしれない…
俺は…弱い生き物だ……
―『本当に大丈夫か?』―
「…うん。」
血溜まりが冷たくて…冷静になれる…
下手に喋ったら色々爆発してしまいそうだ。
「先生……」
―『…ん?』―
「……実は体調悪いから…明日学校休みます。」
―『本当か?!』―
「うん…」
嘘つきは…俺だよな……
先生に行った通り…学校を休んだ。
出血多量の為なのか身体が重く…怠い……
一歩も動けそうにもない程だ…
先生との電話を終わらせた後、部屋の片付けをしておいて良かった…せめて換気だけは今しよう…
身体を起こしたとき、いから競り上がって来る…
「ゔ……ぉえっ……ゔっ……え゛……っ…」
据えた臭いが部屋に広がる。
慌てて窓を開ける。
冷たい風と刺すような冷たい空気が部屋に入り込む。
「………っ……。」
口元を拭い、濡れたタオルを作りに1階へ降りる。
誰も居ない……そう思った瞬間何故か少し安堵した…
洗面所に映り込む俺は酷い顔色で…やつれている。
「………はぁ…」
濡れタオルを何枚か作って部屋に戻る。
血液と汚物の処理をする。
タオルは……捨てなきゃなぁ……そんな事を考えながら余った濡れタオルを真っ赤に染まった腕に宛てがう。
「………。」
痛みは何も感じない…
軟膏を塗りたくり、ガーゼを貼る。
包帯を巻き始めたところでチャイムが鳴り響いた。
面倒くさいから居留守を使おう…
そう思い再び包帯を巻き始め、静かにする。
「………うおっ!?」
急に携帯が鳴り響き思わず飛び跳ねる。
表示されてる名前は先生……と言うことはチャイムを鳴らしたのは…
カーテンを少し開け、玄関の方を覗く。
案の定そこには先生が居た。
俺が居るってことがバレた以上、無視するのもなぁ…
「………はい。」
―『あ、勇間?』―
「はい…」
―『体調大丈夫か?』―
「…まぁ…はい…。」
―『家の前に居るんだけど…直接話せないかな。』―
「………。」
―『無理に、とは言わないけど………』―
「いや……その……」
―『会いたいかな…声じゃ安心できないし…安心させられないだろ…?』―
嗚呼、また胸が痛い…苦しい………
塗り潰されて消えてった筈なのに……
「先生に…移しちゃ…あれなんで……」
助けて…って言えたらいいのに……
こんな俺でも…良いのか……って……
言えないし聞けない…
言ってはならないし…
聞いてはならない…
そんな気がする…
―『勇間。本当に大丈夫か?』―
「………………。」
―『勇間、玄関開けて。』―
「…………。」
―『勇間。』―
「…学校遅刻しちゃいますよ、先生…それじゃ。」
―『ゆうっ…−−−』―
俺の感情なんていらない…
俺の思考なんていらない…
押し込んで…
丸めて………
深い奥底に…捨ててしまえば…
楽になるだろうか…
先生……ごめんね……
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