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真羅 ~side~
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あれから直ぐに警察と救急隊員が駆け付けた。
救急車に乗り込み、再び勇間の手を握りしめる。
『……。』
勇間が居なくなったら…俺は……
強く絶望が頭を支配し始め、自己嫌悪する。
そんなことを考えてどうする。
楽しい事だけ考えなくちゃ…起きたら勇間が安心できるよう、俺がちゃんとしなきゃ……
病院に着くと、緊急治療室に運ばれていった。
勇間の手の感触だけを俺に残したまま…離れていく…
重苦しく扉が締まり、力無く椅子に座り、手の感触を逃さないようキツく握りしめた。
[大丈夫か?]
頭上で声が聞こえ、顔を上げると友人が居た。
心配そうに俺を見つめてくる…
『あぁ……でも少しだけ……いや、かなり…か……不安だ。』
[……だろうな。]
隣に腰掛けるとため息を吐いた友人は力なく笑った…
少しでも俺を元気付けようとしてくれてるのだろう。
『…見つけた時、安心と不安が押し寄せて…凄く気が動転してた…お前に電話を掛けてちょっと落ち着いたけど。』
[そりゃ良かった。簡易的な手当も流石のもんだよ。]
『気休めにしかならないけどな……あとは……』
目の前で赤く光る手術中のライトを見つめる。
『勇間の帰りを待つだけだ。』
冷たかった勇間の手の感触が鮮明に蘇ってくる。
それが全身に伝わって嫌に響く…
手で顔を覆い、深いため息を吐く。
[………大丈夫だ。]
『……おう。』
今度は俺が力無く笑う番だった。
あれから何時間経っただろう……長い……
不安ばかりが募って…頭も心の中も気持ち悪い。
思考回路がどんどん鈍くなっていく…
指先が冷えて…勇間の感触が消えていく。
歯を噛み締めていると、ライトが消え中から医者が出てきた。
勢い良く立ち上がり詰め寄る。
『勇間は!?』
〈もう……大丈夫です。〉
微笑んだ医者の顔が滲む。
崩れるように座り込んだ俺の元へ、友人が駆け寄り肩を抱いた。
[良かったな…っ!]
『…っ……』
声も発することが出来ず、何度も何度も頷くだけで俺は精一杯だった。
勇間が生きている。
それだけでこんなにも幸せだ。
神様………っ…
勇間を生かしてくれてありがとう。
様態を医師から告げられ、勇間がいつ目覚めるかは分からないとのこと。
今は疲労や精神的ダメージにより、昏睡状態に等しいらしい。
ベットで眠る勇間は、少し血色が良い気がする…
『勇間…』
規則正しく上下する布団……胸に耳を当てれば心臓の音が聞こえる。
嗚呼…生きている……
生きているんだ…
またじわりと目頭が熱くなる感覚がした。
起きたら腫れた目を見て勇間はなんて言うだろうか?
笑ってくれるだろうか?
『勇間…起きたらどこに行こうか?』
そんなことを問いかける。
勇間が望むのなら何処にだって連れてってあげる…
勇間がしたい事全て叶えてあげる…
いっぱい我儘を言って…
いっぱい笑って…
そして…
そんな幸せな世界を二人で歩んで行こう。
もうあの家に帰らなくて良いように…
起きたら言おう…
俺と一緒に住もう……って。
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