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昨日…あのことがあってから叶先生と鉢合わせる度に、訝しげな顔をされるようになった。
当然だ…あんな事をしてしまったんだから…
「か、叶先生…っ!」
[…あ?]
「昨日はすみませんでした…叶先生の事なにも考えずに…」
[………。]
「俺のせいで…」
[それ以上言ったらぶん殴るぞ……確かにお前には腹が立ってる。けどな、アイツが選んだ奴なんだ…それをお前が否定しすんじゃねぇ。]
「………。」
[お前はアイツを幸せにしてやれ…それくらい出来んだろ。]
まただ…
また苦しそうな顔をさせてしまっている。
俺のせいで…苦しいんだ…
[………お前がもしアイツを傷つけるような事をしたら、そん時は本気で殴るからな。]
「はい……」
[それと、一々ウジウジ考えて何か言われる方が一番うぜぇ。お前はアイツと自分のことだけ考えて生きてろ。]
そう言い、叶先生は去った。
本気で…本気で先生の事を好きだったんだ…
自然と涙が出る。
「………。」
〔勇間?…って泣いてんじゃん…またかなちゃん?〕
「ううん……俺が勝手に泣いてるだけ…叶先生は悪く無いんだ…全然悪くない。」
〔……ごめんね…かなちゃん本当は良い人なんだ。言い方はキツイけどね……勇間はかなちゃんの為にも先生と幸せになって。〕
「…うん……俺、気付かなかった…知らなかった……っ…」
〔………………うん。勇間も真羅先生も…かなちゃんも、誰も悪くないよ…大丈夫。〕
「……っ……」
渡り廊下に吹き込む風が嫌に突き刺さって…
それが何だか心地良く感じた。
知らず知らずの内に人を傷付けて…苦しませていたんだ…
知っていた所で何になる?
そう問われれば何も言えない。
俺は先生が好きだ。
先生も…俺が好き。
叶先生の為に身を引く事など出来やしないのに…何を言おうとしていたんだ。
どちらに転んでも叶先生には苦しい状況で…変化など無いのに…
「日下君…」
〔ん?〕
「叶先生の事、好き?」
〔そりゃ勿論。〕
「そっか……きっかけは?」
〔んー……初めてかなちゃんを見たとき、辛そうに…苦しそうに笑ってた…けど、どこが芯があった……それがきっかけかな…。〕
「……。」
〔あ、別に苦しませたいわけじゃ無いよ!ただ…あの笑顔が綺麗だったんだ。いつか、苦しそうじゃない笑顔が見たくて…〕
「それだけでも充分だね……日下君、叶先生を幸せにしてあげて…」
〔………言われなくてもそのつもりだよ。〕
ふわりと微笑んだ日下君が、頼もしく思える。
人を愛し、傷付けて…強くなる…
叶先生にもいつか…幸せな日々が来るといいな…
奪ってしまった側の俺がどうこうしても、叶先生を苦しめてしまう…その結果は変わらない。
だからこうして陰で応援していたい。
一番に愛されたい人に愛されない……叶先生はそう言っていた。
こんなにも身近にその存在が居るのに…
恋は盲目だなんて…よく言ったものだ。
『勇間。』
「先生…どうしたんですか?この時間帯にこっちの棟……凄い荷物、あれ先生のですか?」
『そ…今日はちょっと帰るの遅くなりそうだから、先にご飯食べてて…って伝えたくて。』
屋上でお昼を食べている俺にそう告げる先生。
ドア付近には段ボールが2箱あって、その上に更に書類の山…
それを倒さないようにして、日下君が来た。
〔あ、真羅先生じゃん!凄い荷物だね〜…大変そう。〕
『テストも近いしな…日下君はちゃんとテスト勉強してるのか?』
〔うわっ!耳が痛い!今はその話しないで!!〕
そう言って日下君は笑いながら耳を塞いだ。
「今回の範囲広いからね…」
〔勇間まで言う!?〕
「ごめんごめん。」
つられて俺も笑う。
楽しい…そう思える日が来るなんて…
少しだけ感傷に浸る。
日下君と友達になれてよかった…先生と出会えて良かった。
[おい真羅ァ!]
「!」
『げっ…叶だ…』
〔かなちゃ〜ん!!〕
[こんな所で油売ってる暇なんかねぇぞ!]
『お昼くらい食わせろよ〜…』
[うるせぇ……って、お前らか。]
俺と日下君を見て、顔を歪ませる叶先生…
俺の隣から動こうとしない先生を見て、少しだけまた歪んだ。
〔かなちゃんかなちゃん!今日の放課後テストについて聞きたいことあるから行っていい??〕
[あ?駄目に決まってんだろ。]
〔何で!?〕
[教えなくても分かるやつにわざわざ時間割いてる暇ねぇんだよ。]
『お前分かりやすく説明してくれるもんなー』
そう言いながら、叶先生に座るよう促す。
お昼獲得を相当狙っているらしい…思わず笑ってしまう。
大人しく座った叶先生の隣に、素早く移動する日下君はとても嬉しそうな顔をしている…
〔そう言えば見て見てかなちゃん!〕
[なんだこれ……チョコチップ入りカスタードクリームパン?]
〔さっき買ってきた!食べる?〕
[…んな甘ぇモン食えるか!!]
日下君の頭に叶先生の平手打ちがヒットする。
『じゃあこれは?』
[抹茶クリームパン…]
『甘すぎ無くて良いぞ〜。』
[………食う…]
大人しく先生から受け取ると、封を開けて食べ始めた。
あれ……なんか胸の辺りがチクチクする…
先生からなら受け取るんだ…
って思ってしまった。
嗚呼、こういうことか……これを叶先生はずっと…
苦しい……痛い…こんなの…っ…
『勇間!?どうした!?何かあったのか?』
「え……あ…」
気が付けば俺は泣いていた。
そんな俺を見た先生は慌てて、袖で俺の目元を拭ってくれた…
叶先生は…悲しそうな表情をしていた…
嗚呼…こんなの…嫌だ………耐えられない。
「……っ…」
『悪い、二人共…ちょっと抜けるわ。勇間…立てるか?』
先生に支えて貰いながら、屋上から出る。
ジクジクと胸が痛い…
息がし辛い…苦しい。
こんな思いをずっとしていただなんて…っ…それなのに俺にも先生にも励ます言葉をくれるなんて…っ…
叶先生は強すぎるよ…
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