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恋とは何だろう。
愛とは何だろう。
夢のように儚くて…
夢のように綺麗なのかな…
そんな事は無い。
ドロドロとしていて…
もっと醜いモノだ…
「先生……」
寝てしまったのか、先生からの応答は無かった。
先生が狂ってしまった…
人を…殺してしまった。
俺が正さなきゃ……でも、どうやって?
どんな人であろうと俺は先生を愛す……たとえ犯罪者になろうとも。
「先生…先生がどんな人であろうと俺は好きだよ…」
悲しくも無いのに…自然と涙が頬を伝った…
これからどうなるんだろう…
遺体が見つかれば…きっと直ぐに疑われる。
院内のカメラに彼が映っていれば、ここに来たことが分かってしまう。
そうしたら必然的に俺達が怪しくなる…嗚呼…どうしよう…
人は過ちを侵してから後悔する…本当にその通りだ。
先生が狂ってるんじゃない…俺が狂わせてしまったんだ…
先生に依存して…そして…
「…っ……」
嗚呼…涙が止まらない。
これからどうしよう…
これからどうなるんだろう…
先生…先生はこの先如何考えているんですか?
俺は……俺、は……
「ん………」
気が付けば朝になっていて、目の前に看護師さんが居た。
隣りに居た筈の先生はどこにも居なくて…昨日の夜の事が夢のように思える…
《おはようございます、体温測りますね〜…》
「はい…」
時計に目をやると6時30分を指していた。
眠れたような…眠れてないような…
先生は…学校に行ったのかな。
《…はい、異常は無いですね〜…昨夜は眠れましたか?》
「え……あ、はい…」
《それは良かったです…またお昼に測りに来るのでお願いします。》
「はい…」
何も騒ぎになっていない…やはり夢だったのかも…
ふ、と手元を見ると…爪に泥が着いていた。
嗚呼…夢じゃない……本当に俺達は人を…っ…
頭を抱え…嫌な思考を飛ばそうと洗面台の前へ立つ。
鏡に映る自分の顔は青冷めていた…
「……っ…」
病衣の隙間から首元が見える…そこにはくっきりと歯型が付いていた…
手で謎ると不思議と落ち着いてきた。
「先生…」
バレたら…とか…そんな"たられば"を考えている暇はない。
俺は先生に殺されたい……願わくば先生を殺して死にたい。
その為には邪魔者が多すぎる……先生と一緒になるにはそれらを排除していかなければ…
先生の身近に居るとしたら…叶先生……か…
返り討ちに合いそうだし…先生にとってはただの友人…
そう、ただの友人なのだ。
それなら別に良いか…もし邪魔をしてきたらその時はその時だ。
「………。」
少し髪が伸びてきた気がする…切らなきゃなぁ…と思いながら前髪を摘む。
すると急に扉が開いた。
〔元気か〜!〕
「……日下君か…驚いた…」
〔ごめんごめん!お詫びに林檎剥くからさ!〕
「ふふっ…」
そうか…叶先生は日下君の大切な人だ。
それなら尚更やめておこう…
俺達とは違う世界で幸せになって欲しいし。
そんな事を考えながら、スルスルと林檎が剥かれる…
「意外と器用なんだね…」
〔意外とって何だよ!一言余計じゃない?〕
「えー?」
〔………。〕
急に黙り込んだ日下君は、ただ俺を見つめてくる…
何か変な事言っただろうか?
見つめ返すと、日下君は笑った。
「どうしたの?」
〔あ、いや………なんか…別人と話してるみたいで…〕
「ふふっ…なにそれ…変な事言わないでよ。」
〔ん……うん……良い事だし、な…〕
歯切れの悪い…
そんなに変だっただろうか。
兎の形をした林檎を差し出されたので、大人しく食べる。
久し振りに食べた…水分が多くてそれでいて甘い…
アダムとイヴが手を出してしまったのにも、何となく頷ける。
『美味しそうなの食べてるなぁ…二人共。』
〔うわぁっ!!びっ……くりしたぁ…真羅先生かぁ…〕
『そんなに驚かなくても…俺も食べて良い?』
〔どーぞどーぞ!〕
『ん、ありがと。』
「先生…学校に行ったのかと思った…荷物取りに行ってたの?」
『そ、無いと不便な物とかあるだろ?歯ブラシとかさ。』
「あぁ…ありがとうございます。」
〔………。〕
また急に黙り込んだ日下君……何故か怪訝な顔をしている。
「どうかした?」
〔………何か…二人変わった…?〕
『………変わったって?』
〔何か…こう………夫婦感が出てる…〕
『何だそれ。』
先生が笑った……けれど日下君は納得していないみたいだ。
何も変わりない気がするけど…
〔真羅先生、かなちゃんに連絡してる?〕
その問に先生が一瞬だけ動きを止めた。
本当に一瞬だけ…
叶先生と何かあったのだろうか。
『どうして?』
〔…朝、いつも連絡返ってくるのに来なくて…〕
『あいつにもそういう日はあるだろ…気にし過ぎ。』
〔そう、かなぁ…?〕
何か疑っている?
何を疑っている?
何を企んでいる?
何を……
そこまで考えた時、視界が暗くなった。
「…!」
『そんなに日下君見つめて…浮気?』
「なっ…!違います!」
『ははっ…冗談冗談。』
明るくなった視界に先生の笑顔…
これだけで体中に幸せが広がった。
先生が笑っている今…俺達には何も怖いものなんてない…
そう思えるほど…幸せになる。
〔………。〕
先生の笑顔をこの先も見たい…
先生の笑顔を独り占めしたい…
ドス黒い感情…
真っ黒な感情…
「日下君。」
〔んー?〕
「学校、行かなくて大丈夫?」
〔え!?もうそんな時間!?〕
『いくら近いとは言え、油断してたら遅刻だぞー。』
〔じゃ、じゃあ俺行くわ!また夕方来るから!〕
「はーい。」
手を振りながら日下君を見送る。
扉が閉まった瞬間、先生が噛み付くようにキスをしてきた…
「んっ……せんっ……っ…んぁ……っ……急にどうしたんですか…」
『……何となく。』
「なにそれ…先生子供みたい。」
二人で笑い合う。
今日も幸せだ…
穏やかな日々…
『勇間…手、洗おうか…』
「うん…」
洗面台へ行き、手を洗う。
背後から先生が俺の首元へ噛み付く。
痛みな筈なのに…
甘い…快楽…
「い゛……っ……ぁっ…」
甘く響く痺れ……
俺は立っている事が出来なくなり、回された先生の腕に抱えられた。
ベットにゆっくりと降ろされ…先生を見上げる。
先生の口端は少しだけ赤く染まっていた…
強く噛み付いたせいで、血が出たんだろうか。
今度は俺から先生にキスをした。
口の中に広がる鉄臭い香り…
愛おしい香り…
鼻に抜ける息でさえも鉄臭い…
二人の唾液が混ざり…飲み込めなくなって垂れ、ベットにシミを作る。
『勇間…』
「先生…」
見つめ合い…
視線が絡む…
出会ってくれてありがとう先生…
俺を救い出してくれてありがとう…
好き…
大好き…
愛してる…
ずっと…
永遠に…
貴方だけが…
俺の神様…
俺の味方…
「先生は俺ので…俺は先生の…」
『うん…』
「この先もずっと…」
『うん…』
「変わらない…」
『うん…』
「あの日先生が救い出してくれた時からずっと…」
『うん…』
「俺は先生のなんだよ。」
まるで禁断の果実の様に…
ゆっくりと心の中に落とし込む…
逃さないし、逃げさせない…
先生は俺のなんだ。
俺は先生のなんだ。
お互いがお互いを求めて…
お互いがお互いを救って…
こんな幸せな事が起こるなんて…
全然想像もつかなかった…
『俺は勇間の……勇間は俺の…』
「そうだよ…」
『幸せだ…』
「俺もです…」
『好きだよ勇間…』
「俺も好きです…先生…」
幸せな時間…
なのにどこか…
卑劣な叫びを上げる自分が居る。
嗚呼…煩い…
今が幸せなら良いじゃないか…
じゃあこの先は?
この先の運命は?
このままじゃ駄目…
俺が願った幸せは…
こんな形じゃない……
こんな歪んだものじゃ無い。
「せ、先生…」
『ん…?』
「俺達は…」
何故か声が震える…
変な事を聞くわけでもないのに…
怖い…
「お、れ達は…」
『うん…ゆっくりで良い…』
「俺達は……狂ってる…?」
『……。』
先生の目が見開かれる。
幸せだと感じた時間が…
その言葉を口にした瞬間、ガラガラと崩れていく。
冷たく感じる雰囲気…
先生は動かない。
『勇間…』
「………。」
『俺達はやっと幸せを手に入れる方法に気が付いただけだよ…』
嗚呼…
『何も怖い事なんて無いんだ…』
嗚呼…神様…
『俺には勇間が居る…』
目の前のこの人は…
『勇間には俺が居る…』
目の前で微笑むこの人は…
『何も狂ってなんかいないよ…』
一体誰なんでしょうか…?
『大丈夫…』
いつからこうなってしまった…?
『勇間…』
いつから狂ってしまった…?
『愛してる…』
もしかして…
俺が生み出してしまったのでしょうか…?
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