アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
真羅 ~side~
-
学校に行くと、真っ先に叶が来た。
[お前…連絡ぐらい返せよな……]
『ごめん、勇間の荷物詰めてて…何かあったのか?』
[いや……お前の様子が変だったから…]
『あぁ…ちょっと滅入ってたのかもな。』
[………。]
それでも何か聞いてこようとする叶に、微笑みかける。
『大丈夫だ…心配ありがとな。』
[お、おう……]
叶の気持ちをつい最近知った。
ずっと俺の事が好きだと……あの日の放課後に言われた…
[真羅…今、良いか?]
『ん…?どうした…ってお前…泣いたのか?』
[…いや、大丈夫だ。]
『……そっか、まぁ座れよ…紅茶飲むか?』
[おう…]
叶の目尻が赤い…
少し気になるが、そこに首を突っ込む程俺はまだ強くは無かった…
お湯が沸騰する音と秒針の音が部屋に響く。
『日下君と喧嘩でもしたのか?』
[いや……]
『……。』
じゃあ何で…とはやはり聞けそうにない。
喉につまらせた言葉を唾液で飲み下す…
紅茶の香りが鼻腔を擽る。
『ほい、紅茶。』
[ん、サンキュ…]
珍しく大人しい叶…
慣れなくて誤魔化すようにコーヒーを飲む。
叶は喋らない…カップに注がれた紅茶をずっと見つめている…
[あのな…]
『うん。』
[俺…お前と出会えて良かったと思ってる…]
『……うん。』
何となくこの雰囲気を察してしまう。
その先の言葉を聞いたらどう答えるのだろうか…
きっと叶を傷付けないように答えてしまう…けれどその答えは叶を傷付けてしまうかもしれない…
嗚呼、それは嫌だな。
でもそうしなきゃ関係は崩れてしまう……我儘だよ、な…
[ごめんな…]
『へ…?』
思ってる言葉と違った…
なぜ謝る?
[お前があの生徒を連れ出して…幸せなのは知ってる……お前が幸せならそれで良いと思ってた。でも違ったんだ………苦しくて仕様が無かった。]
『………。』
[ごめん………ずっと好きだったんだ…ごめんな…っ…]
ポロポロと叶の目から涙が溢れている。
こんなにも苦しめてしまってたのか…
胸が苦しくなった。
『ありがとうな……気付けなくてごめんな…』
[……っ…]
『お前に……叶に俺の方が沢山救われてたよ…支えてくれてありがとうな。でも………ごめん、お前を幸せに出来るのは俺じゃない。』
[………。]
腕を伸ばし、叶を抱き締める。
こんなにも叶は小さかったか?
こんなにも…こんなにも消えそうな存在だっただろうか…
『俺を好きになってくれてありがとう……俺も好きだよ…』
[…っ……友達として、だろ?]
『うん…』
[はぁ……もう良い、離せ。]
『………。』
鼻声で…それでも笑う叶は…今まで見てきたどの顔よりも強く見えた…
[吹っ切れた。ありがとな…]
『うん…』
[いつまでもこの事でクヨクヨすんなよ!]
『お、おう…』
[俺が惚れた奴だ、シャキッとしやがれ。]
ドヤ顔でそう言い放った叶は、さっきまでの雰囲気を纏っていなかった。
本当に吹っ切れたみたいで安心する…
[じゃあ、俺の事待たせてる奴いるから…向き合ってくるわ。その為にお前に話したってのもあるしな。]
『………そうか…行ってこいよ、んで幸せ掴んで来い。』
[おう…]
そう言って叶は笑顔で出て行った…
夕日に包まれる叶はどう仕様も無い程格好良く見えた。
そんな事もあったなぁ…と思いを馳せる。
[おい、聞いてんのか?]
『んー…?ごめん、聞いてなかった。』
[お前なぁ…]
呆れている叶を他所に俺はパソコンへと向かう。
早く終わらせて勇間の所に行かないとなぁ…なんて考えながら。
[あ。]
『どうかしたか?』
[いや…倉沢を落とした生徒、家にも帰ってないらしくてさ…親御さんが探しているみたいなんだ。]
『へぇ…』
もう騒ぎになりつついるのか…
勇間に危害が加わらないと良いけど…見つかったら間違いなく疑われるだろうな。
まぁ…その前に彼と話をつけなくては…
殺してなんかいない…気を失った彼を箱に詰めて土に埋めただけ…
勇間は殺してしまったんだと思い込んでいるけれど…
そんな簡単には殺さない。
二度と近寄って来ないように、少しだけ指導してからじゃないと…また繰り返すだろう。
もしかしたら周りに言いふらすかもしれない…俺と勇間の幸せを壊しに来るかもしれない…
全て憶測だが…下準備は済ませておかないと。
[お前…何か知ってるか?]
『何かって?』
[病院に行った後…そいつは居なくなった…]
『俺は会ってないよ?』
[………。]
叶はそれ以上聞いてこなかった。
『にしても…その生徒どうしたんだろうな…まだ勇間を狙ってる…とか?』
[さあ?でもあまり気は抜けないな…奇怪な行動しかしていないし…お前も気を付けろよ?]
『……そうだな。』
奇怪な行動。
そう、アイツは奇妙何だ……嗚呼、なんだか胸騒ぎがする…
アイツはちゃんと埋まっている?
逃げ出したりなんかしてないよな?
箱に鍵は掛けたか?
今日…終わったら見に行ってみよう…
居なかったら…見つけ出さなくては。
『叶も日下君も気を付けろよ。周りにばっか警戒させて自分が狙われたらお終いだ………まぁたかが子供だけどな。』
[その子供が犯罪犯す手前だったんだぞ……まったく…]
『まぁな…』
[何か分かったら連絡くれよ?俺もするから。]
『もちろん。』
[………。]
『どうした?』
[いや………その、大丈夫…か?]
『ん?』
[……何でもねぇ、忘れてくれ。]
そう言い残すと叶は自分のデスクに戻って行った…
何を言いたかったのだろうか。
まぁ、それよりも早く仕事を終わらせよう…
勇間の居ない学校に興味など無い。
〔真羅せーんせ!〕
曲がり角から勢い良く出てきたのは日下君だった。
満面の笑みを浮かべている…ご機嫌みたいだ…
叶と上手く行っている証拠かな。
『日下君…危ないからやめような?』
〔とか言っちゃって〜…ぶつかったら受け止めてくれるんでしょ〜?〕
『そりゃまぁ…大切な生徒だからね。』
〔やっさし〜!〕
『何か用があったんじゃないのか?』
〔ん?あぁ…〕
去ろうとした日下君を引き留める。
すると彼は急に真顔になり、声を潜めた…
耳打ちか…
彼の口元に耳を傾ける。
〔朝さ、見間違いかな〜?って思ったんだけど…〕
『ん?』
〔カイト君…っぽい人見たよ。〕
『!』
カイト君……
ここ最近色々ありすぎて忘れかけていた。
生きていたのか…
『そうか…良かった…近くにもう一人居なかったか?』
〔え?んー……居たような…居なかったような…〕
『分かった…ありがとな。』
〔いえいえ。何か次から次へと警戒人物増えてくなぁー…〕
『そうだな…現実味が無いよな…』
笑いながらそう言うと、日下君はパッと顔を明るくした。
〔なんか漫画の登場人物になった気分!〕
『ふっ…何だそれ…』
〔SP…的な?〕
そう言った日下君は、手で拳銃の形を作ると顔の近くに持って行きドヤ顔でキメた。
明るさが取り柄な彼らしい思考だ…
『ま、そんな浮かれ気分で居てテスト勉強サボったら叶に怒られんぞ〜』
〔せっかく忘れようとしてたのに!!〕
『頑張れ頑張れ〜…って言ってもいつも高得点だろ。』
〔まぁ、それなりにはね…かなちゃんに褒められたいし。〕
恋愛は学問にも出てくるのか…微笑ましい。
他愛も無い事を話していると予鈴が鳴った…
『ほら、早く行け。』
〔はーい。じゃ、またね!〕
『おう。』
去り行く背を見てふと考える。
速水君ならこの手についてよく知っているんじゃないか…?
今日はやる事が多い…
先ずはアイツの有無からだな…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 244