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その日の夜、俺達はお互いに収まらない愛おしさをぶつけ合った。
二度目の甘い行為…
名前を何度も呼んで…呼ばれて…しがみつく度に先生の背中へ爪を立てる。
噛まれ、吸われ…その瞬間に甘く全身に響く。
口から漏れ出る声は自分のじゃないくらい、高くて…
恥ずかしくて顔を隠せば、一纏めにして頭上で抑え込まれる。
「…っ…」
『勇間…』
「し、らさ…っ…」
何度目かの長いキス…
どっちのものなのか分からない唾液が、口端から溢れ伝っていく。
口が離れたと思えば、溢れた分を舐め取ってまた塞がれる。
先生との行為はまだ二回目なのに、すごく乱されて…もう恥ずかしいのとかどうでも良いくらい満たされる…
痛くて苦しいだけの行為が、こんなにも幸せな行為になるなんて知らなかった…
それに…
優しい先生が、少し意地悪になるのも…俺だけが知れてるんだと思うと、余計に乱されてしまう。
嗚呼…先生、大好きです。
貴方となら…どんな世界にだって行けそうだ。
「ん…」
行為が終わって、俺は寝ていたみたいだ…
まだ少し腰がダルくて痛い。
けど、それよりも隣に居るべき人がまた居ない。
身を起こして辺りを見渡す…どこに行ったんだろ…下かな…
扉を開けようと手を乗せた瞬間…簡単に開いた。
『おはよ、勇間。』
「真羅さん…」
安堵の言葉を漏らすと、嬉しそうに微笑んだ先生。
そのまま俺を抱き上げて、ベットに戻した。
『今回はちょっと酷くし過ぎた…ごめん。』
「ううん…大丈夫だよ。」
『身体痛いだろ?』
「まぁ…ちょっと……でも全然…」
『…そっか…』
「今、何時…?」
『んーっと…2時かな。』
「……ご飯、食べてない…一緒に作ろ。」
『お、おぉ……うん、良いよ。でも無理なら俺だけで作るから、ちゃんと言ってな?』
「うん。」
ベットの近くで、綺麗に畳まれた衣服を手に取る。
先生が畳んでくれたのかな…なんて思いながら。
着始めようとして気付いた、俺…いつの間に洋服を?
先生が着させてくれたのか?
身体も綺麗になってる様な…
「真羅さん、もしかしてお風呂…」
『うん、軽く洗った程度だけどね。気持ち悪かったら後でまた入ろうか。』
「…ありがとう。」
お礼を言って、ゆっくりと階段を降りる。
最初の頃みたいに、歩けない程じゃない。
まぁ…あの行為自体は何度も経験してたし、身体は慣れている。
始めての事を…一番最初に先生と出来なかった…それだけは少し申し訳無く思ってしまう…
先生は気にしてないみたいだけど、俺はずっと気にしている。
地獄の行為が、幸せな行為になった瞬間…
ずっと付き纏っていて、何だか後ろめたい。
『何作る?冷蔵庫開けていい?』
「うん、この間買い物したばっかだから…それなりにはあると思うけど…作りたいのが無いなら買いに行く?」
『……勇間。』
「ん?」
『………。』
俺の名前を呼んで、まじまじと顔を見つめる先生。
何か変な事言っただろうか?
首を傾げると、何だか今度は嬉しそうに微笑んだ。
『んー…』
「どうかした?」
『いやぁ…敬語じゃ無いなぁって思って。』
「………。」
言われて気付いた。
「す、すみません…」
『いやいや、謝る事じゃないよ。寧ろそっちの方が良い…って、前も言わなかったっけ?』
「まぁ…そう、だけど…」
『馴染んだらもっと嬉しい。』
「……善処します。」
『ふふっ…』
慣れたら慣れたで、校内で会う時大変になる…
そう思ってた部分もあった。
でもやっぱり、先生はこっちの方が嬉しそうだ。
「真羅さん…」
『ん?』
「……来てくれてありがとう。」
『どうたしまして、まぁ当然なんだけどな。』
さらりと言ってしまう辺り、先生は本当に善人の塊だ。
それなのに俺は…真っ黒で…
俺が隣に居るから、先生はどんどん手を染めていくのかも…
『じゃあコレ使って………勇間?どうした?』
「あ、いえ…」
『どっか痛い?』
「………。」
『やっぱり俺だけで』
「真羅さん…」
『?』
「俺のせいで…先生が、先生じゃ無くなるの…嫌だ…」
『勇間…』
「俺が隣に居るから…先生が色んな人と疎遠になるのも嫌だ。」
『………。』
「俺…先生の足枷だよ、ね…」
『…そんなこと無いよ。俺が、お前の隣りに居たいからやってるんだ。』
「………。」
『邪魔者は排除しないと、だろ?』
綺麗な笑顔で、真っ黒な言葉を吐いた先生…
威圧されたのだろうか…俺はただ頷く事しか出来なかった。
『俺達の幸せを邪魔する奴なんて、要らない…違うか?』
「…………でも…」
『それとも勇間は…幸せになりたくない?』
「…っ……」
先生の瞳が冷たい。
本気でそう思ってるんだ…
でも、確かに…そうだ。
俺達が幸せになるのに、沢山の人は邪魔をして来る。
父さんも母さんも…あの時利用したアイツも…全員…
勝手に決め付けて、勝手に俺の道を決めて…
本当の道は俺達が築くもので、他人は関係無い。
それを示しているんだ。
なら…先生のしている事は正解…
『勇間、自分達の幸せで誰かが不幸なる…そう思ってないか?』
「…思ってる、のかも…」
『幸せになる為には、多少の犠牲は付き物なんだよ。』
多少の犠牲…
多少の…
それなら…仕方無いか。
そもそも俺は、あの二人の事憎んでたわけだし。
先生が正解だと言うのなら、正解なんだから。
『ね、勇間…』
「ん?」
『…お前は、俺と居て後悔してるか?』
「ううん、してないよ。何でそんな事聞くの?真羅さんは俺と出会って後悔してるの?救ったことも?」
『…即答……ふふっ』
「だって真羅さんが変な事言うから…」
『ごめんごめん、俺もしてないよ…お前と出会った事も、何もかも全部。』
「………。」
『寧ろ、お前を救えた事で…俺も救われた…』
柔らかく微笑んだ先生は、安堵している様にも見える。
何かが救われたのなら…良いけれど…
『今日の事、勇間に話したいんだけど…大丈夫?』
「え…?」
『色々あったから、あんまり沢山の事で一杯一杯にしたくないからさ。』
「…大丈夫だよ、俺で良ければ聞きたい。」
『うん……じゃぁ、取り敢えずご飯作ろうか。』
先生の口から出る言葉はどんなのだろう。
今日手あった事は、どんな事だろう。
俺に話したいと言ってくれる内容は、どんなのだろう。
不安に思ってるわけじゃないけど、何だか聞くのが億劫だ…
でも、本人が俺に話したいと言うのなら…俺はそれを黙って聞くだけだ。
流れていく水を見つめながら、邪魔な思考も一緒に流れていくのを願った。
「いただきます。」
『いただきまーす。』
先生の手料理…久し振りだな…
やっぱり美味しい。
「何でこんなにも違うんだろ…」
『そりゃ愛情を沢山注いでるからね。』
「え……あ、俺…今声…」
『うん、出てた出てた。』
「うぅ……」
『でも、勇間のご飯…美味しいと思うぞ?』
「そうですか?」
『市販のやつとか、お店のよりも全然美味しい。』
「…………。」
それは…先生独特のフィルターが掛かってるんじゃ…
そう思いながら、心のどこかでは喜んでいる自分も居て…何だか一人で恥ずかしくなった。
『…勇間。』
「ん?」
『俺ね、話す前に…勇間に謝らなきゃいけない事があるんだ…。』
「………。」
神妙な面持ちで、そう切り出した先生。
先程までの穏やかな雰囲気が、少しだけ変わった気がする…
食べ進め良いのか分からず、箸をそっと置いた。
『ん、あぁ…ごめん…食べながらで全然良いから、耳だけ傾けて欲しい。』
「わ、分かりました…」
おずおずと食事を再開する俺を見て、困った様に笑う先生。
その笑顔も…なんだか戸惑ってる様にも見えて…
やっぱり話し難い事なのかな…
『今まで…勇間に教師らしい言葉とか、前向きな言葉とか伝えてたけどさ…本当は、俺が一番そう思ってなきゃならないんだ。』
「………。」
『勇間と出会う前、ずっと塞ぎ込んでたんだ…』
「塞ぎ…込む…」
『んー…まぁ、それなりには遊んでたんだけど…なんだろう…周りの声を聞かなくなったって言うか…』
「………。」
『今日が…俺の母さんの命日だったんだ。』
箸の動きが止まる…
頭を、鈍器で殴られたかの様な衝撃。
息が……詰まる。
『ずっと逃げてたんだ…』
「………。」
『……ごめん。俺、勇間と母さんを重ねてた時がある。』
そう言った先生の表情が、哀しそうな…苦しそうな…
悪い事じゃない…
でも…何でだろう…胸が痛い。
『本当にごめん…でも、お前と出会った後は…ちゃんと別だって思ってる。それは絶対だ。』
「………。」
『この先の話も、何があったのかも…どうして重ねてたのかも全部話す……』
「……うん。」
『勇間が聞きたくないって思ったらすぐ教えて…』
「後回しにしても、意味が無いでしょ?…大丈夫、全部受け止める。」
『………。』
「俺は先生の言葉を聞きたくない…なんて思った事、一度も無いよ。」
『勇間…』
「だから大丈夫、安心して話して……でも、先生が辛いなら落ち着いてからまた聞かせて。」
『…ありがとう…。』
聞きたくない…か。
どうなんだろう…確かにさっきの言葉で胸が痛んだ。
けど、先生が話したい事を遮る程じゃない。
話したいと言ってくれたんだ、それに水を指すのも駄目だ…
先生のお母さんと、俺が…似ているということなのだろうか。
こんな優しい人のお母さんと…俺が…
考えながら、ぽつりぽつりと話し出した先生の声に耳を傾けた。
それは、自分が思っていたよりも苦しかった…
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