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「っ……」
「可愛いな、ほんと」
上司だからの感想なのか、亮雅さんの言葉は時々俺を惑わせる。
鍛えられた腕に抱きしめられるだけで呼吸困難を起こしそうだ。
「陸のやつ、俺が優斗を独り占めしてるって知ったら怒るだろうな」
「……可愛いです。本当に」
「俺が言ったのは優斗のことなんだけど」
「俺は可愛くないです。たぶん目腐ってんですよ」
「大抵の女は可愛いって言えば落ちるぞ」
「最低じゃないですかっ、というか……亮雅さんは絶対可愛いなんて女性に言わないでください」
こんな男前に優しく褒められて、惚れない女性がいるのだろうか。
それは嫌だ。
できるだけ亮雅さんの印象は極悪人であってほしい……って、俺はメンヘラか。
「お前こそ、俺以外の男に"カッコイイです"なんて言ったら犯すぞ」
「そんなこと言いません。キャラ崩壊ですよ、それ」
「よく分かんねえけど、優斗は男を魅了する素質持ってんだ。だからなるべく職場でも1人行動するなよ」
「それは……ちょっと、難しいというか」
「コミュ障だからか」
「……」
図星を突かれた。
ああ、そうだよ俺はコミュ障だよ。
人と話すことは愚か声をかけることさえ躊躇う男だ。
「一番暇そうな谷口でも護衛につけとくか……」
「王子や姫じゃないんですから、そういうのは結構です」
「たまにはヘルプに来いよ。そうすればいくらでも守ってやれる」
「……」
本当は俺自身で自衛すべきなんだ。
でも、亮雅さんがいると心強いのは間違いない。
「というか……経理課のマネージャーでもあるのにほとんど宴会場にいますよね」
「ああ、動いてる方が好きだからな」
てっきり忙しいからと返されるのかと思っていたが、ただの私情だった。
たしかに俺と亮雅さんは性格も能力も正反対だ。
運動も……ほとんどできない。
「なんだったらヘルプじゃなくても、気軽に来たらいい。あそこは実家みたいなもんだ」
「実家……俺には、ピリピリしまくってるようにしか」
「表向きはな。宴会はタイムスケジュールがきっちり決まっていることが多いから、区切りの時間には集中していないといけないんだよ」
「それ以外は、」
「裏でコーヒー飲んで休んでるやつばっかだ」
「…………」
さすがホワイト会社。
余裕があるな。
「邪魔にならないように、します」
「ならねえよ。朝から夜までずっと1人なんてつまらねえだろ」
余裕があるから優しいのか、優しい性格だから余裕があるのか。
よく分からないが、亮雅さんの言葉にまた心が軽くなる。
仕事は気負いしてやるものじゃない。
それが知れてホッとした。
しばらく何気ない会話を続けていたが、気がついたら眠っていた。
目が覚めると亮雅さんの腕に抱きしめられていて、焦りと困惑が同時に生まれる。
……ものの、頭はまだ覚醒しない。
俺の髪をなでる手の感触がする。
温かくて気持ちいい。
「ん……眠い……」
「まつ毛なが」
「……ん〜……手、きもちい」
べったりと付いて離れないのは俺の方だった。
心地がよくて離れたくない。
そんな気持ちで亮雅さんの腕に顔を擦り付けると、太ももの辺りにそっと触れられる。
「っ」
「おはよ」
「…………」
出来心だ。
若気の至りといえるほどの歳でもないが、寝起きで頭がぼんやりとしているせいか魔が差してしまう。
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