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転校生-36 篠宮桜
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それからは適当に話して、三限目から授業を受けた。
でも教室に篠宮はいなくて、まだ七瀬といるのかと不安になる。
俺が授業をサボったように、七瀬だってサボることは出来るはず。
あれだけ悠吾に大丈夫だと言われたのにまだ不安で、そんなことばかり考えているとあっという間に授業は終わっていき、昼食時間になった。
いつもならすぐに俺のクラスに来るはずの七瀬が今日は遅い。
というか、来るかすら分からない。
でも、流石に来てくれるだろうと思い待つことにした。
来て、何を言われるかは分からないけど。
時計を見ると五分は経っていた。
もしかしたらもう他の人と食べてるかもしれない…
少し悩んでから七瀬のクラスに行くことにした。
これで誰かと食べてたりしたら諦めて一人で食べよう。本当は少し話したかったけど、七瀬が嫌なら引くしかない。
「あ、結城くん!」
「わっ、」
教室に入ろうとすると丁度七瀬が出てきて思わず声を上げてしまった。
わざわざ教室まで来ても良かったかとか、今更考えてしまう。
七瀬が俺の事をどんな風に見てるか分からない今、どのように声をかけたらいいか分からない。
いつも通り話してもいいのだろうか。
「えっと、七瀬…、」
それより先の言葉が思いつかなくて口を噤む。
謝るのは簡単だったが、そうしてしまうと篠宮の言ったことを肯定しているような気がして嫌だった。
蔑んだ目で見られているかもしれないと思うと七瀬の顔を見ることすら怖くて、黙って下を向くことしか出来ない俺を七瀬はどう思うだろう。
「結城くん。」
七瀬に名前を呼ばれ、体が強ばる。
何を言われるんだろう。
篠宮と七瀬が二人で部屋を出ていった後、帰ってくるかもなんて期待したのは俺が馬鹿だったから。
どうせ見放されるなら、最初から期待なんてしない方がいいのは知っていたはずだった。
なのに、今ももしかしたらまだ嫌われてないんじゃないかと思ってしまう。
次にかけられる言葉はそんなものじゃないと、期待してしまう。
そんな俺はやはり馬鹿だと思う。
悠吾に馬鹿だと言われて否定したけど、否定なんてできる身ではなかった。
「結城くん、こっち見て。」
恐る恐る言われた通り目線を上げると七瀬が優しく俺を見ていた。
そんな目で見られては余計にまだ大丈夫なのではないかと思ってしまう。
七瀬は、俺を見放さない__?
不意に涙が出そうになったのを、七瀬に気を遣わせると思い必死に抑える。
「ごめんね、俺の所為で不安にさせちゃったね。嫌いになんてなってないよ。」
最初に聞こえた言葉が "嫌い" でも "やっぱり無理" でもなくてひどく安心する。
それと同時に、困惑もする。
何故俺が嫌われたかもしれないと思っていたことが分かるんだろう。
「とりあえず屋上行こ。ゆっくり話したいし。」
腕を引かれて、まだ良く状況を理解出来ないまま七瀬について行く。
嫌われていないと分かったのに、まだ気分は晴れないままだった。
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