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不良がもたらす波乱について②
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「すまん、嫌ならやめる。」
普通は嫌だってことに最初から気づいておくべきだったんだよな。申し訳ない。
「……そもそも、なんで下の名前で呼んでんだよ」
「下の名前で呼ばれるのも嫌なのか?」
「女みてェだろ。だから……」
そんな事気にしてたのか。確かに俺も最初は女と勘違いしてたが、でも……
「俺は良い名前だと思うけどな。名字とも合ってるし。それに、こう、上手く言えないけど、凄く綺麗な名前だなって思った。」
「…………。」
おい。何故そこで黙る。黙られたら俺どうすればいいのか分かんないんだけど。
「…………で、いい……」
「ん?」
青生ちゃんが何か言ってる。でも俯きながら小さな声で言っているので声が全然届かない。
「話す時は顔を上げて、相手の目を見て、はっきりと!」
って、なんか思わず中学ん時の先生の受け売りをしてしまった俺が笑える。でも今考えると正論だよな。
そう言って青生ちゃんの顔を手でやや強引に上げる。
…………おい、なんでそんな顔してるんだよ。
「あ、青生でイイっつったんだよ!殴んぞ!」
顔を真っ赤にしながら俺目掛けてガチで手を振り下ろそうとしてくる青生ちゃん。俺は咄嗟にそれを掴んで押さえた。ふぅ、危ない危ない。
「殴られるのはまじ勘弁だけど、そう呼んで良いなら呼ばせてもらう。改めてよろしくな、青生ちゃん!」
俺が微笑みかけると青生ちゃんはさらに顔を赤く染めて、ちゃんは付けんじゃねェ!と怒ってきた。
……そうこう話しているうちに料理を食い終わっていた俺。感想はというと、正直すっごい美味しかった。
そして俺の好みの味でもあった。
どうやら青生ちゃんはかなりの料理上手みたいだ。
これから毎日作って欲しいくらいだ……いや、作って貰うか……?
「ご馳走さま!料理、今まで食ってきた中で一番美味かった。ありがとう。で、それを踏まえて凄く迷惑かけること言って良いか?」
「……食えたならよかった。…………なんだよ?」
もしかしたら断られるかもしれないけど、ここは意を決して言ってみよう。
「これから毎日、俺にご飯を作ってくれないか?」
その言葉を言った途端フリーズしたように固まる青生ちゃん。なんだよその反応www面白い奴だなwwwww
でも、料理作れない俺からしたら作ってくれるとかなりありがたいし、料理は美味いしで俺にとっては一石二鳥なんだよな。
「…………お前、それは、どういう意味で……」
「……?そのまんまの意味だけど?」
なんでそこに突っ掛かってくるんだ、と思ったがまずは可否が知りたいので深く突っ込まないようにした。
「…………別に、作ってやってもいいけど、俺、帰んの遅ぇから」
「作ってくれるのか?なら、青生ちゃんが帰ってくるまで待ってるから大丈夫だ。一緒に食おうぜ。」
「あっそ」
おいおい、なんで今になってそんなそっけない態度なんだ……なんて思って青生ちゃんの顔を見たら案の定照れ隠しだったので、責めないでやった。
そんな照れ屋の青生ちゃんが口を開く。
「…………なぁ、俺、お前の名前も何も、まだ知らねェんだけど」
そういえば、さっき自己紹介しようとしてた途中だったな。すっかり忘れていた。
「そうだったな、スマン。俺は今日、この学校に転入してきた五十嵐尚斗だ。ちなみにクラスは2‐Bな。」
「転校生……。だから俺が怖くねェのか……」
「ん?何が怖いんだ?……ま、確かに最初はコイツなめてやがんなとか思ったけど、あんなに美味しい料理を無償で出してくれるなんて中々無いし、そこまでしてくれた青生ちゃんは良い奴に決まってんだろ?」
「お前、ゲンキンな奴だな。……俺は良い奴なんかじゃねェよ」
顔は笑っていながらもどこか悲しそうな眼差しの青生ちゃん。なんでそんな事言うんだ。
そういえば、青生ちゃんって不良っぽいよな。だからか何かあったのだろうか。…………ん?不良?
「…………もしかして、俺のクラスの不良って、」
「……俺の事、だな」
「まじか!じゃあ俺達隣の席だぜ!明日から学校来いよ。」
隣に知り合い居た方が安心するしな、と付け加えると、なんでその話の方向に行くんだよ。と笑われた。
結構青生ちゃんって笑うんだな。
「……でも全然学校行ってないとか停学とか色々聞いたんだけど……」
口にしてから気付いた。これ本人はあまり触れられたくない話題なんじゃないかと。傷ついてはいないだろうかと青生ちゃんを見たら、余り気にしていない様子だったので良しとしよう。
「……まぁな。……こんなナリな上に俺の目付きが悪ィせいでよく喧嘩売られっから、返り討ちにしてるだけなんだけどな。それがセンコーの耳に届くみてぇで、よく停学にされんだよ……」
「でも、それって少し過剰なだけで正当防衛なんじゃ……」
「……どうせ俺がなんと言おうとセンコー共は聞かねェし。もう諦めてるよ」
喧嘩買う俺も悪いのは分かってんだけどな、と困ったように笑う青生ちゃん。
「なんか納得いかないな……。あ!青生ちゃんの前髪が長いのって、目を隠して喧嘩売られない為だったりするのか?」
「まぁな」
青生ちゃんも色々苦労してんだな。
「でも、前髪上げてる方が似合うぜ。表情もよく見えるしな。……照れてんのとか(笑)」
「うっせ」
その言葉にまた照れたらしく、それを隠すように前髪を下ろしてしまった。本当面白い奴だな。
「…………で、明日から学校って……」
「ん?あぁ、来てくれんのか?」
「今まで全然行ってねぇ俺が行っていいモンなのか……。」
確かに今まで行ってなかったら入り辛いかもな……。
俺とはまた違った感じで馴染めるか悩んでんだな。
「今停学中じゃないんだろ?だったら行っても問題ないだろ」
「……そ、だけど、クラスでぜってぇ浮く自信ある」
「俺が居るから大丈夫だろ」
なんて言うけど俺も転校生の身だし、勝手が分かってないから不安ではあるが。ま、晴輝と喜島も居るし大丈夫な気がする。多分。
「…………じゃ、行く。」
そう言って目をそらす青生ちゃん。これは照れてん
な。なんか青生ちゃんの心情が段々読めるようになってきたぞ。
「よっしゃ!明日楽しみにしてるな」
そんな喜ぶ事かよって笑われたが、一緒に学校行ってくれるって充分嬉しいことだよな。
ここで突如、部屋に謎の音楽が流れる。
何の音だよコレ。
「あ、風呂沸いたみてぇだけど、お前先入るか?」
「なんだ、風呂沸いた音かぁ………。そういえばな、聞いてくれ。」
「……なんだよ」
もしかしたら部屋に荷物が一切ないから、既に気付いてたかもしれないが、
「なんと!俺、何ひとつ荷物を持ってきていないん
だ!」
「……お前馬鹿だろ」
さすが青生ちゃん。ツッコミが早い。
「それクラスメイトにも言われたわ」
「そんでシャンプーとか貸せってか?」
シャンプーだけなら、どれだけ良かった事か……。
「着替えも無いんだ!おまけに家具も何一つないから、ベッドもお借りしたい……」
「着替えと、ベッドって……。」
「駄目か?あんなベッドでかいのに?キングサイズだろ?駄目だったら、俺はこのまま床で寝るぞ!」
「……ダブルサイズだよ。ってことは一緒に寝なきゃなんねェって事だよな……まだ出会ったばかりの奴と」
なんか凄い嫌そうな言い方だな。でも顔は真っ赤で照れてるっぽい。どういうことなんだよ。
「そんなー、俺たちの仲だろ?」
なんてふざけて青生ちゃんの肩に手を乗せてみる。
たったそれだけなのに、大袈裟に反応してくれるから嬉しくなってついもっとちょっかい出してしまう。
「…………俺たちの、仲」
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