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不良がもたらす波乱について④
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「何でって、教室行くにはココ通んなきゃじゃん?」
「そ、そう…だよな……」
晴輝は不思議そうな目でこちらを見てくる。……確かに、俺の返答は明らかに不自然だったよな 。
一方、そんな晴輝の隣で喜島は楽しそうな顔をしていた。
「ふーん、やっぱ五十嵐の同室って夏海だったんだ」
「…………知ってたのか?」
喜島がまぁね、と笑う。
だから前にあんなわざとらしい言い方してたのか、と今になって気付いた。
「だって空いてる部屋なんて夏海のぐらいだろうしね。
…………ま、何はともあれ、これからまた同じクラスメイトなワケだし、よろしく。」
「あー!!オレもオレも!よろしくな夏海!!」
晴輝は無邪気な笑顔で手を差し出す。
それはいつもの事ながら、今は珍しく喜島が男に対してよろしくなんて言った事にかなり驚いた。
もしかして2人共気を使ってくれてるのかもな……。なんて良い奴らなんだ。
青生ちゃんはそんな二人のことを驚いた顔つきで見ていた。
「……お前ら、俺が嫌じゃねェのか?」
「なんで?だってオレら何かされた訳じゃないし、それなのに何で嫌う理由があるの?」
正に正論だ。俺はそういう言葉を聞かせてやりたかったんだ。さっき悪口言ってた奴らは晴輝の爪の垢でも煎じて飲め!
続いて喜島が口を開く。
「ね。それに今日初めて会ったけど、会ってみて嫌な感じはしなかったし。本当は良い人なんでしょ?」
俺、人をみる目はあるよ、と得意気に笑った。
確かに喜島ならありそうだな。……いや、青生ちゃんの本質を見抜いたってことはあると言えるのか……。
「それじゃ、早く教室行こうぜっ!」
晴輝と喜島が階段をかけ上がって教室へ向かう。
俺もその後を着いていこうと方向転換して足を踏み出そうとしたが、一向に青生ちゃんの着いてくる気配がない。
……もしかして、まだ迷ってんのか。
「……皆が皆、嫌な奴ばっかじゃないだろ。現にこういう奴らも居るってわけだし。
…………だから、さっき言おうとした事は、言わないでおいてな。」
そう言ってまた歩みを進める。
後ろにいる青生ちゃんの顔は見えないけれど、確かに笑っているとわかった。
2人は先に行っていたので、その後に俺と青生ちゃんが教室一緒にへ足を踏み入れた。
「おはよう」
俺が声をかけると皆一斉にこちらを向いた。
な、なんだよ……怖いな。でも一番人の視線が怖いと思ってるのは青生ちゃんの方だよな。
……そうだ!皆に青生ちゃんを紹介して、その本性を知ってもらえば良いのか!
超ナイスアイデア、今ばかりは自分を誉め称えたい!
「皆、聞いてくれ!今日から青生ちゃんも俺と一緒に登校する事になりました!」
教室がざわめく。
「みんな青生ちゃんの事怖いって思ったりするかもしれないけど、本当はそんな奴じゃないんだ。実は目付きが悪いだけで喧嘩売られて云々。とにかく青生ちゃんにも色んな苦労があったってことだ!
…………で、何よりコレを見てくれ!」
俺は青生ちゃんの長い前髪を上げる。そうされた彼は驚きと恥ずかしさが入り交じった顔をしていた。
「「おぉ!イケメン!!!!」」
教室から歓声が上がる。どうやら好感度は上昇しているようだ。
……なんて思ってたら、隣の彼はリンゴみたいな顔色で俺を睨み付けていた。
「てめェ!いい加減離せっ!!!!!」
前髪を上げている俺の手を振りほどいて俯いている。こいつ照れてんな。ほんと面白い!
「って感じで照れるとちょっと暴言吐いちゃったりするんだけど、ただの照れ隠しだから許してやってな」
教室が更に盛り上がる。クラスメイトのみんなは、
照れ屋でイケメンとか最強じゃん
なんか夏海に対する印象変わったなー
あんな奴だったんだ……。今度話しかけてみよう!
なんて口々に言っているのが聞こえて、思わず笑みがこぼれた。晴輝と喜島の方を見てみるとVサインをして祝ってくれていた。
やっべ、なんか俺の方が嬉しくなってきたんだけど……。良かったな、青生ちゃん……。
「おっ、お前らうるせェんだよ!!!!!」
なんて青生ちゃんは叫んだが、クラスメイト達はその赤い顔を見て「なんだー照れてるのかー」なんて笑っていた。皆がよく理解してくれて嬉しいぞ。
そんな和やかな雰囲気の時、チャイムが鳴り始めた。
……そういや、HRとかあんの忘れてたな。青生ちゃん、あんま先生達と仲良く無さそうだし大丈夫なんだろうか……。
ガラガラガラ、と音をたてて前のドアが開けられた。
「あー、朝のHR始めるよー……って、夏海くん!!????」
出たな鬼畜眼鏡。最悪俺が青生ちゃんを守ってやらねば…………。
「よかった!夏海くん!!!やっと出席してくれたんだね!!!ずっと待ってたんだよ!!!!!」
担任は青生ちゃんの手をとって、凄く嬉しそうに話しかけていた。ってか近い近い。青生ちゃんもたじたじだろ。
……ところで、なんで担任はこんなにも嬉しそうなんだ?先生達とは仲悪いんじゃなかったのかよ……って思ったので聞いてみた。すると、
担任は青生ちゃんの本当の事とか知ってて、朝の会議とかで抗議してみたんだけど、しがない教師一人の力じゃ何の意味も無かったんだ……。なんて悲しそうな顔で言っていた。何度か青生ちゃん本人に電話かけたりもしてみたけど案の定出なかったらしい。
まさか鬼畜眼鏡もとい担任がこっち側の人間だったとは……。凄い努力もしてくれてたみたいだし、本当に良い担任を持って良かったと今では心から思う。
「何より、学校に来てくれて良かったよ。あー、不甲斐ない担任で何もしてあげられなかったけど、何かあったら頼っていいからね」
青生ちゃんはその言葉に静かに頷いた。
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