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煽りと独占欲④
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〈尚斗視点〉
うーん、早く終んねーかな、この口喧嘩。
俺もう何でこうなってんのかさっぱりだし、もう聞き飽きたんだけど。
「ちょっとー、尚斗の事一番よく知ってるのは俺だよー?」
おい、何ちゃっかりみーくんも参加してんだ。それ以上核を落とすのは止めろ!!
「でも今の尚斗をよく知ってるのは俺たちだよね?」
「そうだ!」
ほら言わんこっちゃない。二人も反論し始めたよ。もう見てらんないな。
「晴輝、俺ら違う場所に行ってようぜ。おさまる気しないし」
「う、うん。そうだね、じゃあオレたちの部屋くる?」
ギャーギャー騒ぐ三人の目を潜り抜けてなんとか抜け出した。
ふぅ、なんか凄い疲れたな……。
晴輝たちの部屋に入ると、さっきとは違って静かで安心する。
……そういえば前に俺が片付けてから、部屋ちゃんとキレイなままなんだな。どっちが片付けてるのかは分らないけど感心した。
俺が辺りを見渡していると、晴輝が口を開いた。
「あの、さ……どうして急に来たのかな、彼。」
「みーくんのこと?……俺も知らん。いつも勝手だし。それにアイツのせいで買い物行けなくなったんだよな……」
「そっか……ドンマイだね……」
「なー。……あれだったら今から2人で出かけちゃうか?」
なんてな、と笑いながら晴輝の顔を見た。……って何だよ、その顔。
かつての転入した頃を思い出す。そんな子犬にような目で俺を見つめるな……!何も断れなくなる……!!!
俺はその頭を撫でて「じゃ、行くか!」と言った。否、言わざるを得なかった。
とりあえず青生ちゃんにはメールを入れておいたので、早速外に出る。
菖蒲月。半袖になるにはまだ早すぎるその季節に、月光に照らされながら森を抜ける影がふたつ。
「でもさー、最近あの2人本当スゴいよな……。喜島なんて急に名前呼びしてきたしさー。別に嫌じゃないけど急にどうしたって思う」
「それはねー、たぶん喜島が心開いてくれたって事じゃないかな。俺もそうだったし。」
「確かに……。喜島、晴輝って呼んでるな。」
「そう!ま、オレの考えだけどね。……でも、尚斗呼びはオレの特権、だったのにな……」
ちょっと悲しくなっちゃうんだよね!と何時もの笑顔で言われる。
その横顔は月明かりのせいか、やけに寂しそうに見えた。
晴輝、そんな事思ってたのか……。
2人きりになったからこうして今伝えてくれたのだろうか。俺、妬かれてたのか……。
……なんだろうな、この気持ち。嬉しくてくすぐったい感じ。
「でもさ、晴輝は俺がこの学校に来て一番最初に話しかけてくれてさ、それからもずっとツルんでくれてるじゃん。……それが、本当に嬉しいんだ。だからそんな悲しそうな顔するなって!
それに、お前にはあるじゃん。俺の一番の心友だっていう特権がさ!」
なんかすっごいクサイこと言ったけど、俺の本心だし届いてくれると嬉しいな。
「尚斗……!」
って今度なに泣きそうになってんの!?そんなに嫌だったの!??
「オレ、嬉しい……!そう言ってくれて……本当嬉しい……」
「おいおい!だからってそんなに泣くなよ!」
「だってぇ……」
涙をボロボロと流す晴輝。そんなの効いたのか……?つか効きすぎだわ!
でも不思議と俺も胸が暖かくなってくる……。
「仕方ない、この間買ったハンカチ貸してやるから泣きやめ!」
「うぅ〜、ティッシュがいいよ〜!」
「なんて贅沢な!」
そのあと涙が止まらない晴輝を無理矢理ひっぱって買い物へ行った。
そして帰ってきた頃には3人の口論は終って……
……なかった。
こうなったら最終手段だ実行だ。道中、晴輝と話し合って出した結論。
「ただいま!……いきなりだが、お前らに伝えたいことがある」
俺の突然の発言に三人の口が止まる。唾を飲みこむ。
「俺、今日からお前らと別居します」
「「「どうしてそうなった!」」」
三人の声が寮内に響き渡った夜だった。
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