アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1章
-
(そと、外だ)
初めての夜から外に出た事が無かった訳では無い。
客の要望次第では家まで直接出向く必要があったからだ。
とは言え、今回の外出はモモからすれば意味合いが大きく異なるもので……
「……さむ、さっむ!?」
だが、それでも久々に感じる外の――冬夜の刺す様な空気への耐性等モモは持ち合わせていなかった。
「っと、これ使って。上着も…ちょい大きいけど、羽織らないよりはマシだ」
流れる様な自然な動作でマフラーを巻かれ、麻倉の着ていたコートを羽織らせられる。
モモは驚いた。
それも当然だろう。
先程まではモモが近付いただけでも狼狽えていた男が、今はまるで紳士の様にエスコートして来るのだ。
ギャップで心が揺れてもおかしくは――
(揺れてねぇ、断じて……けど、こういう事は普通に出来るのか…変なの)
「うーむ、取り敢えず家に向かうか。電車とタクシーどっちが良い?」
「……どっちでも」
結局人目の少ないタクシーが選ばれ、あれよこれよと気付いた時には麻倉の家に着いていた。
(普通)
モモをその場の勢いで買ったとは思えない程普通、よりは少し大きいがそれでもまだ常識の範疇である一軒家がそこにはあった。
「よし、入って入って。部屋は片付けたばかりだから綺麗なはず」
「……ん」
そこまで言って麻倉はおや、と歩みを止めた。
それを不審に思いモモも止まる。
麻倉の表情は心配の色を浮かべていた。
「もしかして、車苦手だった?気分悪そうだけど…」
そこでやっとモモは自分の体調が不安定になっていた事に気付き、そしてそれが気持ち悪いという事だと思い出した。
その様なマイナスの感情、状態をシャットアウトし続けた代償であろう。
特に気持ち悪い等慣れ切ったものには色濃く出る。
モモは酷く自身の事に疎くなっていた。
(そもそも、車乗せられる時は睡眠薬飲んでたから…苦手なのか分からん)
モモは肯定も否定もせずその場に留まる。
それを肯定と受け取った麻倉はモモを寝室へ誘う。
「晩御飯とか考えてたけど、今日はもうこっちの方がいいね。ちょっと待ってて」
と、ベッドに腰掛ける様に促すと麻倉は部屋を後にした。
(……ヤるのか)
そこまで思考してハッとする。
幾ら刷り込みの様にされて来た事であれ、ベッド=情事となってしまった頭を抱える。
とは言えだ。
麻倉……下の名前さえ聞いてないこの男、得体が知れないのだ。
普通、事情がどうであれその場のノリだけでは人間を買わない。買えない。
そも100%の善意等、この世界には存在しないのだ。
(人を買ってやること、そんなのは一つだ……変な期待なんてするだけ無駄)
「はい!ココア飲める?体温まったらすぐ寝ること。いいね」
(ムダ……だよな?)
モモが今まで生きて来た世界の常識とは反する麻倉の行動に翻弄されるがまま、久方振りの綺麗な身体、綺麗なベッドでの睡眠を迎えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 7