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目が覚めた、という感覚を頭で理解した。
それでもモモは目を開く事は無く、暗い景色の中でぼけっとしている。
朝が嫌い、それはモモが常日頃から思っている事。
これに関しては当てはまる人がそれなりにいるのではないだろうか。
学校だろうが会社だろうが身売りだろうが嫌なものは嫌で、それから逃れる様に人々は目覚めを先送りにするものだ。
(あ、俺、身売り嫌だったわ)
最近は薄れつつあった感情を一つ思い出す。
でもどうして急に思い出した?という疑問と、近くに人の気配を感じたのはほぼ同時だった。
「っっ――!」
ガバッと勢いのまま起き上がると昨日の上客との疲れが押し寄せて来た。主に腰に。
状況整理の為に息を整える。
(俺は昨日、何故かベッドに寄り掛かる様に眠っているこの男に…買われた)
改めて言葉に表すと余計理解に苦しむ。
それは価値等ない自分を買った事、買ったのに襲わなかった事、何か妙に優しかった事、etc.
例を挙げればキリがなかった。
昨日から同じ様な事をぐるぐると悩んで本当に申し訳ないと思うのだが、実際に分からないのだから仕方無し。
とは言え。とは言えだ。
彼の境遇その全てを踏まえた上でこの男の存在について考えれば、だ。
モモの自覚が有る無しに関わらず、少なからず……絆されない訳が無いのだ。
(…………寝てる。寝顔、可愛くねー)
そろりと、眉間の皺を解す様に指を当てる。
だが、それによって解けたのは麻倉の睡眠の糸だった。
「…ぅ、ん゛……」
「あっ、ッ…ごめ」
相手を起こす等どうかしている、と。
自らの行いを叱責し、謝罪を述べようとするモモが固まる。
それを見遣る麻倉は依然眉間に皺が寄ったままだった。
(なんか、雰囲気、ちが)
ギシ、とベッドが軋んだと気付いた頃には麻倉が自身に覆い被さっていた。
とたん身体が強ばる。
「――――モモ」
「っぅ!?や、まて…お、い……ッ」
耳元で囁かれた声は吐息混じりのもので殊の他妖艶に感じた。
動揺。
麻倉の行動に虚をつかれ反応に遅れる。
思えば昨日からこの様な事態が多過ぎるのだ。
(違う、そこじゃない…そこじゃ!)
モモが一番動揺している事、それは。
「ん、う…さ、さわ、んなぁ……ふ、ぁ」
(からだ、へん…熱い……!)
媚薬でも盛られたのかと錯覚する程の身体の感度。
それはモモが失っていたものの一つであり、苦手なものの一つでもあった。
自身を見失う程の甘い痺れ。
慣れていようがいまいがそれは脳を犯す。
「…ん、可愛い」
「は、ぁ!?ばか、も…ンっ、んんーー」
自身を優しく、それでいて激しく愛撫して来るその男は野獣と言う喩えがしっくり来た。
服の上からだけでは飽き足らず中へ侵入して来た手に身体が震えた。
恐怖、も勿論ある。が。
この時、それを上回る程のある感情がモモの中で芽生えつつあった。
残念な事にそれの名前を思い出せる様な冷静さは欠けているのだが。
(なんなの、ほんと、なんなのこいつ)
人差し指で先を刺激され堪らず腰が浮く。
味をしめたように重点的にそこを攻め立てられれば簡単に絶頂を迎えた。
「は、ぁ……ふ…っぅ」
「…………!」
涙目のまま麻倉を睨み返せば……さぁぁっと血の気の引いた男がそこに居た。
あ、戻ったと理解した瞬間。
「うわぁぁぁぁあ!?!?ご、ごごごめん!!また俺……あぁくそ、あー風呂入れる??あれだったら俺が洗」
「一人で入れる」
昨日今日で一番の狼狽えっぷりを見せる男に恐怖やら怒りやらの感情は吹っ飛び、純粋に
(二重、いや三重人格か…?拗らせてんな…大丈夫かこの変態)
と、心配になった。
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