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突然のこと(2)
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松永はちょっとだけ入院することになった。
検査入院ってやつね。
飲んでた抗生物質がどうやら入って来る細菌やらを殺すついでに体内の有益なモンもやっちゃう強力なやつやったらしい。長いこと飲んでたらしく医者が松永の体がアカン!!ってね。
俺は鎌やんに「松永君に何も聞いちゃいけないよー」って釘刺されとったけんなんも聞かんで仕事終わってから病室に毎日行ってたんやけど俺よりも会社から帰るのが早い鎌やんがいつも病室に先におった。
鎌やんが聞いたところによると松永その抗生物質が体のいいもんもぶっ壊すの知ってて飲んでたんだと。
「普段の松永君ならそんな判断しないんだけどねー。病んでたのかもねー」
「なんで知ってて飲んでたん?」
「恐かったんだと思うよー。飲めば一時的にだけど熱も下がるし体調もよくなるから毎日飲んでたんだろーけどー体はさらに弱っていったんだねー。でも止められなかったんだよー」
「なんで?」
「それは体調悪くなって今の生活が崩れるのが恐かったんじゃないのー?薬でごまかしてたんだねー。いつかまた元に戻るんじゃないかってー」
「何が恐いん?」
「もう長野君との生活しか帰る場所ないからって言ってたー。体調悪くなって行って心も病んでいったんじゃないかなー。仕事のことも体のことも全部......強迫観念みたいなねー」
「そっか。目は?」
「目は大丈夫っぽいー」
少しだけ安心した。
視力は大丈夫なのか。
松永の病室には次々に人が来る。モリクミはもちろんやけど吉野や奥田も佐伯さんも須田元教授も津島のおっさんも緒方も。
そして松永の会社の人間も来た。
津島のおっさんと緒方が裏で口利きしたのか残ってた有給使ってそれでも足りんかったけど1か月位会社を松永は休むことになった。
「ゆっくり休め」
って病室で会社の人間に言われたらしいけどそいつらが帰った後松永の病室に頃合い見て戻ったら松永が悲痛な顔しとった。仕事に穴あけたこととか、俺との生活のことで頭がグルグルしてるんやろう。
「松永、ゆっくり休もうぜ。俺二人の生活費位稼げるべ?」
「そんなんじゃない」
「へ?」
「僕は長野と二人で生活費とか折半して二人で生活基盤作るつもりだった」
「でもさぁーお前体が」
「分かってる」
ほんと分かってるんだろうか。
無理せんでゆっくり休んだ方がよかろーもん。
体治すのが先やろーもん。
須田元教授が佐伯さんと一緒に来た時松永に言いよった。
「院に入りなおしなさい。研究職を目指すのはどうかね?」
「それは出来ません」
「今の仕事よりは心穏やかでいられるんじゃないかと思うがねぇ」
「そこに行くまで給料がないです。院生の間僕はお金が入らなくなる。院のお金もないです。長野と生活していけない」
松永は須田元教授の申し出を断りまくってた。
松永も追い詰められてるのかもしらん。
モリクミがお富さんに報告したんやろう。
お富さんが急遽帰国した。
お金もかかるし、仕事しよるけんそう簡単に戻って来れんはずやのに現れた。
戸田と奈々子の結婚式にはいけなかったのに松永の一大事に駆け付けた感じだ。
後で「二人には帰国したのは内緒にしといてよ?結婚式には出ないで今回私嫌なやつみたいじゃん」と言ってた。
お富さんが病院に直接来た。
「あんたら何してたの?」
玄関まで迎えに来たモリクミと鎌やんにお富さんは来て早々噛みついた。
「あーん!?やーん!?」
「モリクミ。あんた毎日のように松永くーんとか言いながらつきまとっててこのザマ?あんた松永君の様子に気付かなかったわけ!?」
「やーん(涙)」
「鎌田!!あんたも何してんの!?あんたもいながらこれなわけ!?」
「いやー。僕はお富さんみたいに勘鋭くないよー。分からなかったー。だって松永君なんだよー?」
「言い訳はいらない。あんたら使えない」
そう吐き捨てるとスーツケース引き摺りながらハイヒールカツカツ「私は激怒だよ!!」と分かりやすい歩き方しよった。
病室に入ってお富さんが松永の様子見てから世間話始めた。
松永には一言も体調のこともこれまでのことも聞かなかったし言わせなかった。
あっちの生活がどーの、日本食食いてー、あっちのやつら足でかすぎー自分の足に合うハイヒールがねー、とかどーでもいい世間話を松永としてた。
俺ら黙って松永とお富さんが話すの聞いてた。
しばらくして
「一気に話したら喉渇いた。ジュース買って来るわ。長野君も付き合って」
って手を引っ張られて病室出た。
「鎌田、モリクミあんた達はここで松永君の相手してなさい」
お富さんは二人を振り返って言い残して病室出た。
廊下歩いて自販機の所に来てからお富さんが俺の背中バンバン叩いた。
「長野君、笑顔よー笑顔。長野君もやばいね?」
「そう?」
「そうよ。参ってる顔してる」
「そうなんかな」
「長野君らしくない。モリクミも鎌田もだけどね」
「あいつらも?」
「普段と様子が違う。おかしくなってる。全員調子狂ってる感じ。今回は全員ドツボにはまってやばめ」
「そっか」
「私が来たから大丈夫よ」
「そうなん?」
「私嘘吐いたことある?」
「ないね」
「でしょ」
そう言えば大学時代松永の変異に気付いたのもお富さんだけだったな。
お富さんがそばにおったらこんなんなる前に解決してたんかもしらん。
俺ずっとそばにおったんやけどなぁ。
「長野君自分を責めちゃーダメよーダメダメ」
「それ日本じゃもう流行ってないよ」
「そうなの?youtubeで見たんだけどあっちだと日本のお笑いがねー時差あるのかな?www」
「分からんけど」
「長野君のせいじゃない。そんな顔しない」
「俺どんな顔してるん?」
「ひどい顔」
「そっか。なんかさ、いろいろあり過ぎてさー俺も頭ん中がごちゃごちゃなんよね」
「全員がそんな調子じゃあ松永君治るものも治らないから。とりあえず元にみんな戻さないとね」
そう言って自販機でお富さんがジュース買い込んでた。
「俺払うよ」
「ジュース位おごるわ。その代わり約束しなさい」
「なんを?」
「松永君が元気になるまでそんな顔するのやめなさい。長野君の顔ひどいわ。寝てないでしょ?長野君も心やられちゃってない?」
「なんで分かるん?」
「誰だと思ってんの?お富さんなめんなよー!!」
笑いながらお富さんが背中バンバン叩いた。
「モリクミも鎌田も........ちょっとお灸すえないとねー」
「何するん?」
「元に戻ってもらうだけよ。あんな弱気で覇気のなくなった抜けがらみたいな二人じゃ松永君のマイナス思考をさらに膨らますwww」
「俺にはいつものあいつらに見えるけどね。少し元気ねーかな?っち感じやけど」
「相当あの二人もキてると思う。二人との付き合いは長野君よりも長いから私には分かる」
「そっか」
「長野君もそうだけどあの二人も松永君のこと愛しちゃってるからね」
「愛しちゃってるか」
「私もだけどね。鎌田は人を好きになるような人間じゃなかったんだけどね。松永君に鎌田はちょっと似てる。だから鎌田も今回の件では混乱してるかな。お気にの松永君がーってね」
「そうなんか」
「モリクミも変だけど鎌田もそーとー変だからね。あの鎌田が!?って最近の変貌ぶりは松永君のお陰もあるんじゃないの?人間らしくなった」
「どこがwww」
「昔に比べたらよ。大学一年の時あいつほんとひどかったんだから。時間あれば鎌田の変態武勇伝でも聞かせてあげる」
ジュース渡されて病室に戻る廊下の途中で
「このお富に任せちゃえのー。前だって私活躍してたじゃん?wwww」
大学時代の松永の留学絡みの時のことか。
あの時福岡までお富さんは行ったんだったな。
お富さんはお富さんの勘だけで動いてたなそう言えば。
なんかお富さん来てほっとした。
うまくいくんじゃねーかって。
このうまく言えん感情とか現状とか。
全部なんとかしてくれるんやないかって。
俺がせないかんのやろうけど俺もそん時正直心折れてた。
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