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Crash:Dynamite
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「ちょっと!しらばっくれてんじゃないわよ!」
部屋から出てリビングへ入ろうとした俺の耳にそんな怒声が届く。俺は足を止めて瞳孔を開かずにはいられなかった。
え?なんなの?
この事務所の男と女の割合は格段に男に比重が傾いている。なんたってヤクザだから。
女性も何人かはいるかもしれないが、俺の家であるこの階にやってくる女性は今まで見たことがない。ということは組員のものじゃない。外部からのお客さんかその手の輩の方に違いない。
兄貴が連れ込んだのかな?うわあどうしよう。もしそうだとしてもヒステリックな叫び声を聞く限りあまりいい状況じゃないみたいだ。
聞き耳を立てるような真似をしてしまうのは気が引ける。
でも好奇心には勝てないし、中の様子を探ってみないことにはどうすることもできない。
なんて言い訳を重ねたけど結局気になって仕方がなかった。その場から立ち去ることはせずそっと意識を会話に集中させた。
「しらばっくれてなんかいない」
と、兄貴の静かな声。
「嘘ついてるんじゃないわよ菊次!いないわけないでしょ。だって靴あったもん!」
「そんな風に吠えられてもないものは出せない。遊びに行ったんだ」
「ありえなーい!隠してるんじゃないわよもったいぶるわねえ!ウチが!千晴君が!いるか!いないか!分からないわけないでしょうが!」
「だからいないって何度言ったら分かるんだ。とっとと帰れ邪魔だ」
まさかの俺の話題?
修羅場だと思ったのに原因はもしかしての俺かよ!?混乱してきた。なんで俺のことなんか探してるんだこの人。
というかこの声ってまさかあの人じゃ………。
そこで俺はすべてを悟った。兄貴に突っかかる人物の正体も、一体何について彼女は怒っているのかもすべて。悟ったからこそ俺は本能的に危機を察知する。
久しぶりすぎて、声を忘れかけてた。
「千晴君のにおいがする!」
あわててドアから離れようとしたが、時すでに遅く勢いよく開かれたドアに強かに額を打ち付けてしまった。
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