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Lost Article
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千晴が公園内から去っていくのを確認した後、東條はどっと疲れに襲われてベンチに腰がけた。
煙草を加えてライターをつけ火をともす。
口内に広がる甘くほろ苦い味に煙と共にため息をも吐き出す。誰もいなくなった公園にその音が静かに広がっていった。
しばらくの間呆然と狭い空を眺め意識を空にしていたが、やがて顔をあげて形相を歪ませた。
長い指が自身の前髪に触れ、あるはずのものがないことを再度認識して肩を落とす。
「ヘアピン落とした」
普段つけている銀色のヘアピンはウタに貰ったものだ。こーちゃんとお揃いと無邪気に渡されたものを無下に断ることも出来ず、なんやかんや気に入りつつあるアクセサリー。
身に着けていることが当たり前だったものがなくなっているのに気付いたのはついさっきだ。
ウタの背中を押してやる千晴をばれない程度に見つめる最中、何となくヘアピンを触った指が直に髪の毛に触れた。
ん?と違和感があり、次に携帯を開いて、ヘアピンがなくなっていることを悟る。
全身が嫌な収縮に襲われ、慌てて周辺を確認したが見当たらない。
ヘアピンをいじるのが彼の癖で、この公園に入る前にいじったことはまだ記憶に新しい。
ということはこの猫の額ほどの公園に落ちている可能性が高い。
狭いといっても遊具が置かれている周りは草木が生い茂っている。手入れがあまりされていない証拠である。
残念ながら、一度ウタがどんぐりを捜すために東條を草むらに追いやっている。
幸い、色は銀色なので見つかりやすいだろう。日暮れでなければの話だが。
この時期は日が暮れるのが早い。先程まで斜陽の色に染め上げられていたのにもう薄暗くなってきている。
早く探さないと真っ暗になってしまって捜索が困難になってしまうだろう。
覚悟を決めて煙草を吸い終わった東條は茂った草むらの中に入っていった。
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