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ピンポーン…
インターホンの音が、静かな室内に響く。
『こんな時間に、誰だ?』
そう思いながらも、出るのも面倒で放っておく。
すると、ガチャガチャと鍵を開ける音がする。
背筋が凍り付いた。
全身を、イヤな汗がだらだら流れる。
ここの合い鍵を持っているのは………久弥だけだ。
扉が開き、予想通りの人物が姿を現す。
同時に、浴室からはタオルを巻いただけの、男。
「…なっ…?」
久弥が驚愕し固まる。
「…ごめん…」
俺も固まってしまい、それしか口に出来ない。
膝がガクガク震える。
駆け出した久弥を追い掛けることすら出来なかった。
まさか、こんな最悪な形でバレるとは…。
久弥には、普通の幸せを手に入れて欲しい。
確かにそう願っていたはずなのに、他ならぬ俺自身が久弥を傷つけてしまった。
ふと気付くと、俺は玄関先に座り込んでいた。
連れ込んだコに、「悪い、帰って」と言った覚えは、なんとなくある。
相手も、面倒に巻き込まれたくは無いようで、すんなり帰ってくれた。
震える手をスマホに伸ばすが、どうしても久弥への通話をタップ出来ない。
ここで、久弥の気持ちを引き止めて、どうする…?
どのみち、俺が相手じゃあ結婚もしてやれないし、子供も持てない。
だったら、久弥を繋ぎ止めたりせずに、潔く身を引いた方がいいんじゃないか…?
今は、久弥も辛いかもしれないが、まだ若いんだからすぐにイイ子が見つかる。
後々の幸せを考えるならば…。
今なら、俺1人が悪者になればいい。
とは言っても、本当に放っておけるほど、割り切れない自分もいる。
未だに震える手で、柳に電話をかけた。
呼び出し音が途切れ、柳が出るが、俺の口は渇いて動かない。
「もしも~し? オヤジ?
どしたの!?」
「…柳、悪い。
久弥を、頼む…」
やっとの思いでそれだけ口にする。
「は? 何?」
「久弥を…、傷つけた…。
俺が…悪いんだ…。
…久弥を頼む」
「よく分かんないけど、取り敢えず久弥んトコ行ってくる。
ちゃんと自分でも謝れよ?」
柳に礼を言い、通話を終える。
気付くと、ボロボロと涙が溢れていた。
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