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あの日から半年程。
何度も何度も後悔に押し潰されそうになりながらも、久弥へは連絡出来ないままだった。
久弥の誕生日も、クリスマスも…。
会議などで本社に行った時でさえ、顔を合わせないように細心の注意を払った。
本社の人事部から連絡が来たのは、ちょうど俺の誕生日だった。
本社の退職者の都合で、急だがまた本社に戻るようにとの指示だった。
本社には…、久弥がいる。
正直、異動を断ろうかとも思った。
しかし、仕事に私情を挟むわけにもいかないし、何よりも、久弥に会いたかった。
今更、前の関係に戻れない事は分かっている。
それでも、仕事にかこつければ、久弥に会える。
自分の力だけでは、もう、久弥に会うことは一生出来ない気がしたから…。
異動は1ヶ月後。
正式な内示はその一週間前くらい。
久弥は、どう思うだろうか…?
内心、恐怖に押し潰されそうだった。
「新人以外はみんな顔見知りだと思うが、今日からここの部長になる本宮くんだ」
人事部長に紹介され、挨拶をする。
「本宮です。
出戻りですが、今日からまた宜しくお願いします」
と言っても、殆どみんな顔見知りなので、挨拶なんて形だけだ。
人事部長が去ると、みんな早速俺に話し掛けてくれた。
しかし、案の定久弥はPCに向かい、こちらからは視線を逸らしている。
その日は結局、個別に挨拶することすら出来なかった。
転任から一週間。
淡々と時間は流れた。
始めはどうなることかと思ったが、支社を飛び回っているせいもあり、未だに挨拶程度しか話していない。
ただ、ふとした瞬間に久弥に目を向けてしまい、笹井と談笑する久弥の様子に、勝手に一人で傷付いてしまう。
最近は帰るのが深夜になるのもザラで、意識を失うように眠りにつく。
朝、顔を合わせた柳から
「せっかく作ってるんだから、帰ってきたら飯くらい食えよ」
と文句を言われるが、そんな気は起きない。
「久弥、やつれてるみたいだけど、飯食ってんのか?」
「自分で聞けばいいだろ?
忙しいったって、同じ部署なんだから、それくらい話せるだろ!」
尤もな事を冷たく言い放たれては、それ以上何も言えなかった。
しかし、俺には教えてくれないが、必ず久弥の様子を見に行ってくれているようで。
柳に心から感謝する。
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