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翌週、木曜までに仕事を詰め込み、金曜に久弥を誘った。
断られたら…とドキドキしながら、メールを送る。
何度も打ち直し、断る隙を与えないために【アパートまで迎えに行く】と送ると、久弥からは【はい】とだけ返信が来た。
出先の支社から急いで戻り、車で久弥のアパートへ向かう。
ハンドルを握る手は、汗でぐっしょり濡れていた。
アパートに着き、スマホを鳴らす。
ここまで来てなお、インターホンも押せない自分に呆れる。
すぐに、久弥が降りてきてくれた。
「ごめん、待たせた?」
「いえ…、オレも…今着いたところです…」
「乗って?」
久弥を助手席に座らせる。
初めてこれに乗せた時は「樹さん、レクサス似合いますね~」なんて笑ってくれてた。
なんだか、たった数年前の事なのに、相当昔の事のように懐かしい。
隣に久弥が座ってくれるだけで、こんなに嬉しいなんて…。
「…少し、…遠出してもいい…?」
問い掛けると、無言のまま久弥が小さく頷く。
移動の間、たまに口を開くのは、やはり仕事の事だけ。
それ以外は、怖くて話題に出来ない。
重苦しい沈黙の中、やっと目的地に着く。
行き先は、前に一度連れてきた、料亭。
その時は久弥の誕生日で。
誕生日当日は平日で泊まりがけはキツかったから「ちょっと奮発」と笑いながら連れてきた。
しかし今回、互いに笑顔はない。
料理が運ばれてきて、女将が去った後、意を決して頭を下げた。
「ごめん!!」
頭を下げ続けていると、
「…樹さん…」
久弥が名前を呼んでくれた。
「…ごめん…」
きちんと謝ろうと思っていたのに、小さくそう言うのが精一杯だった。
暫く沈黙が続いたあと、ゆっくりと顔をあげ、久弥を見つめ、思いを口にする。
「久弥のこと傷付けておいて、こんなこと言えた義理じゃないのはわかってる。
けど…、もし…もう一度チャンスを貰えるなら……。
今度こそ、裏切らない。
久弥に…好きな相手がいるのも、…ちゃんとわかってる…。
もし…、それが女だったら、…まだ諦めもついたかもしれない。
けど…、久弥が他の男に…抱かれるなんて…耐えられない…。
好きです。
もう一度、チャンスを下さい」
そう言って、深く深く、頭を下げた。
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