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顔は下げたままだが、グスッと鼻をすする音で、久弥が涙を流したのがわかった。
「ごめん!
でも、最後までは誰ともしてない!
…って、だからいい訳じゃないよな…。
ごめん!」
畳に額を擦り付けるように更に頭を下げると、久弥がポカンとした声をあげた。
「…え…?
どういう…意味…?」
その声に顔を上げると、意味がわからないと言うような表情をしていた。
「…その…手で…シたりは…した。
けど…後ろには……シてない…。
バーで誘った子と…ホテルで…ちょっと触ったりして…終わり…。
後ろ、強請られたりもしたけど、気分が乗らなくて…。
誰も連絡先も知らないし、二度と会ってない」
そう説明する。
「アパートにまで連れ込んでたくせに」
キツい口調で問い詰められ、萎縮する。
「あれは、ホントに気の迷いでした。
部屋に上げたのはあれが最初で最後!
すみません!!
あ、でも、久弥に見られた後、何もしないですぐ帰したから、アイツには触ってない!」
「ふ~ん。
せっかくのお楽しみ、邪魔してスミマセンでしたね~?」
つい言い訳じみた事を口にしてしまい、久弥の怒りを買う。
「いや、そうじゃなくて…」
「じゃなくて何ですか?」
「ごめんなさい!
二度としません!」
久弥が無言で睨み付けてくる。
俺に怯えない久弥は、久しぶりな気がする。
「ちょっと、安心した」
思わずそう呟くと
「はぁ!?
オレは怒ってるんですが!?」
とまたキツく睨まれる。
「うん、だから、それが。
久弥、今まで辛そうな顔ばっかりで、怒ったりしなかったから。
きっと、自分を責めたり、してたんだろ?
悪いのは俺なんだから、ちゃんと俺を怒っていいんだよ?」
言うと、ちょっと間を置いて久弥がハハッと声を出して笑った。
「何か、怒ってるのもバカらしくなってきました。
もう、いいです」
久しぶりの笑いに嬉しくなりながらも、“もういい”の言葉に慌てる。
「いやいや、よくない!
俺も、正直に話したんだ。
せめて、久弥の好きな男って誰か、教えて下さい」
また久弥に向かって頭を下げる。
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