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「知って、どうするんですか?」
久弥の少し冷ややかな目に怯みつつも、負けじと言い返す。
「そいつより、いい男になって、久弥にまた惚れてもらう」
その言葉にも、久弥は含みのあるセリフを冷たく言い放つ。
「あの人よりいい男って、相当難しいと思いますよ?」
「それでも、可能性はゼロじゃない!」
「そんなに知りたいですか?」
「教えて下さい」
頭を下げると、久弥が近づいてきて耳元に顔を寄せる。
無意識に身体がビクンと固まる。
知りたいが、それと同じくらい知るのが怖い。
『誰だろう。
久弥の周りの、“いい男”。
課長の鈴木か、同期の山田か…?
もしかして、柳じゃないよな…!?
いっそのこと、知らないヤツの方がマシだ』
ぎゅっと目をつぶり、久弥の答えを待つ。
全身が冷たく凍りついたようだ。
久弥が軽く息を吸うだけで、心臓が締め付けられる。
「オレが好きな人の名前は……」
僅かの間さえ辛い。
もう、言わないでと止めてしまいたい。
「本宮樹さん
です」
「…は…??」
予想もしない答えに、間抜けな声を上げる。
今、久弥は何て言った???
幻聴か?
いや、
“本宮樹さん、です”
確かに、そう言ったよな?
きっと、思わず上げた顔も、相当な間抜け面だっただろう。
言葉の出ない俺に、久弥が可笑しそうな、切なそうな、苦しそうな、嬉しそうな、複雑な表情を浮かべ、告げる。
「好きじゃなかったら、こんなに苦しみませんよ。
でも、勘違いしないで下さいね?
許した訳でも、信用しきった訳でもありませんから。
ただ、樹さんを愛してるだけです」
我慢出来ずにガバッと久弥に抱き付く。
「ちょっ…苦し…」
息も出来ない程に抱き締める。
「…ありがとう…。
…愛してる……。
……ありがとう…」
そう言って、暫く久弥を抱き締め続けた。
暫く抱き締めた後、ゆっくりと拘束を解く。
正座をして畏まり、恭しく口を開く。
「久弥、愛してる。
今度こそ裏切らない。
だから、一緒に幸せになろう?
好きです。
付き合って下さい」
「オレも、樹さんが好きです。
こちらこそ、宜しくお願いします」
久弥が、涙を流しながら微笑んでくれた。
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