アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9.
-
マンションへ戻ると、久弥が俺をねだってきた。
やはり、相当怖い思いをしたのだろう。
なのに、俺の方が震えたりしてしまったせいで、さっきは甘えられなかったのか…。
少し後悔したが、それよりも思い切り愛してやる方が先決だ。
その晩は、久弥の求めるままに、久弥を貫いた。
翌朝ベッドから起き上がれない久弥を、ぎゅっと抱き締める。
「樹さんが来てくれて、嬉しかった…」
久弥も、強く抱き締め返してくれた。
久弥への愛しさが込み上げる。
俺たちは男同士ではあるが、何か形のあるものがほしくなる。
「ちょっとごめん」
腕の中の久弥をベッドに座らせ、おもむろにベッドサイドの引き出しに手を伸ばす。
そこには、久弥とやり直した際に、自分への戒めの意味も込めて、柳にもサインして貰った婚姻届。
いつか久弥が全てを許してくれたら、渡そうと思っていたもの。
折り畳まれたそれを、久弥に差し出す。
「久弥、愛してる。
男同士だし、結婚は出来ないけど。
一生、そばにいてください」
久弥は目をパチパチとさせ、それを見つめた。
が、次の瞬間。
「あはははっ!!」
笑った。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
渡す物を間違えたかと思い久弥の手元を確認するが、間違いない。
俺は真剣に考えていたのに。
怒りと悲しみと悔しさが込み上げる。
「…そんなに、笑わなくたっていいだろ…?
俺は真剣に…」
「ごめんなさい!」
久弥が俺を遮って言った言葉が、胸に突き刺さる。
ごめんなさい!?
昨夜愛し合ったと思っていたのは、俺の思い上がりだったのか?
ただの独りよがりだったのか?
情けないが、涙が出そうになる。
「違うんです。
樹さんを笑ったんじゃなくて…。
オレの部屋から、持ってきて欲しい物があるんですけど、お願いできます?」
満面の笑みの久弥に、そう頼まれた。
『こんな時に何を…?』と思ったが、有無を言わさぬその笑顔に従う。
指示された場所に封筒を見つけた時、一瞬『もしかして久弥も…?』と淡い期待を抱いた。
しかし、封筒は2通。
少なくとも、俺の渡した物とは違う物だろう。
中を確かめる勇気もないまま、それを待つ久弥の元へと向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
80 / 85