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「久弥、これ?」
「ありがとうございます。
中、見てみて下さい」
持ってきた封筒を差し出すと、そのうちの一通を久弥が俺に返す。
訝しく思い久弥を見つめると、催促するように頷かれた。
恐る恐る封筒の中身を取り出す。
一つ息を吐き出し、堅く瞑った目を開く。
そこには…
「久弥!!」
思わず久弥を押し倒すように抱き付いてきた。
「ちょっ…痛い!」
久弥の抗議すら、今の俺の耳には届かない。
「ひさや~」
情けない声を出す俺の手にもまた、半分記入された婚姻届が握られていた。
「笑っちゃって、すみません。
全く同じ事してるから、可笑しくて」
嬉し涙を流しながらまじまじと久弥の名前が書かれた婚姻届を見つめる。
そこには、久弥の母親の署名まで。
久弥の俺への愛の深さと覚悟を目の当たりにし、俺も決意を新たにするのだった。
因みに、もう一通は離婚届…。
そんな物は、絶対に出させない。
思い切り破ってやったら、
「せっかく書いたのに~」
と口を尖らせる久弥も可愛い。
恋は盲目とは、よく言ったものだ。
久弥は元から可愛いが、特に今は何をしても可愛くて仕方がない。
ペアリングをねだる久弥も、俺がいない時に指輪をしていたと告白する久弥も、何もかもが可愛くて、ついつい押し倒してしまった…。
翌日、案の定ペアリングを買うどころではなく、久弥に怒られた。
しかし、もちろん本気で怒っているわけではなく。
布団を被った久弥が
『結局、樹さんには適わないんだよなぁ~』
と、内心自嘲しているなんて、俺には知る術はない。
月曜日、霧島課長の顔にイラっとして、未だに痛むであろう腹部を、いつものボディタッチの振りを装ってグリグリと抉ってやったのは、久弥には内緒だ。
ーーーーーENDーーーーー
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