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「あら、あんた授業は…って、見ない顔だね」
表に出ていたスタッフが晃広に気が付き声をかけてきた。
ふくよかな体系の、いかにも食堂のおばちゃんですという女性に軽く頭を下げた晃広に、そのスタッフはあぁ!と声を上げた。
「あんた、今日から引っ越してきたって言う子だね。藤堂さんから聞いてるよ」
「…どうも。今日から世話になる」
お世辞にも愛想のいいとは言えない晃広のあいさつにスタッフは豪快に笑ってよろしくと答えた。
名乗った晃広に続き、スタッフも竹田だと名乗った。
「部屋は見に行ったのかい?」
作業の邪魔になるといけないとすぐにはなれようとした晃広を知ってか知らずか、竹田はそう話を続けた。
手を動かしているところを見ると作業を中断させているわけではなさそうだ。
「あぁ…まぁ」
「いいところだろう?二人部屋でも広く感じる」
「確かに…広さは十分だった」
「風呂は共有だが時間の指定はないし何しろ大浴場みたいなものだからね。そこはもう行ったのかい?」
「いや、まだ」
短い晃広の返答にも嫌な顔をしない竹田はどちらかといえば話しやすい方だった。
男所帯の食堂に努めているだけあって、男の子の育て方を分かっているような感じだ。
しばらく話していると、玄関の方がざわざわとにぎやかになってきた。
授業が終わり、生徒たちが帰ってきたのだろう。
「今日も賑やかだねぇ。…あ、あんたルームメイトとは会ったのかい?」
「顔も名前も知らん」
「そうかい。…でも藤堂さんから話は聞いてるんだろう?」
「話?…あぁ、部屋替えの件か?」
三か月以内に部屋を変えてほしいと言われるという話は、ここのスタッフにも伝わっているようだ。
先程まで豪快に笑っていた竹田も、今では笑みを浮かべるだけだった。
それほど、この寮では深刻な問題なのだろう。
「俺には関係ない話だ」
そう言い切った晃広に、竹田はぽかんとした後そうかいと笑った。
「さ、話し込んじゃって悪いね。夕飯は十八時からだよ。今日は生姜焼きだ」
少しだけ嬉しそうな竹田の表情に首を傾げた晃広はそのまま食堂を後にした。
もう同室の奴も帰ってきている頃だろう。
部屋に戻った晃広は、誰もいない部屋を見渡した。
帰ってきていると思っていた同室はいない。
カバンもなく、一時的に部屋を開けているということではなさそうだ。
まぁ自分には関係ない。
晃広は自分のスペースだと言っていたロフトベッドに上がり目を閉じた。
良い頃合になったら風呂に入って、気が向いたら食事をしに行こう。
そう考えて、やってくる眠気に抗わず夢の中へと入っていった。
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