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かたん、と微かに音が聞こえ、晃広は目を開いた。
あれからだいぶ寝てしまったのか、窓の外は真っ暗だった。
今何時だ、と確認するためにベッドの上をまさぐって目を閉じた。
携帯はカバンに入れたままだ。
そしてカバンは下にある。
めんどくさいと素直に思ったが、空腹であることに気が付いた。
もしかしたら食堂も閉まってるかもしれない。
だが水をのみに行くくらいは許されるだろう。
そう思って顔を上げた晃広は、下に誰かいることに気が付いた。
音を立てないように動きは小さいが、全くの無音ではない。
ここ一週間帰ってきている様子はなかったが、さすがに帰ってきたのだろう。
もしかしたら晃広、ルームメイトに会いたくないと思っているのかもしれない。
だが晃広はそれで寝たふりをしてやるほどお人好しではない。
気を遣うことなく起き上がり、そのままロフトベッドから降りた。
微かに驚いたような空気を感じた。
晃広はちらりと横を見て、動きが止まった。
そこにいたのは、あの渡り廊下にいた少年だった。
水色の目が驚きで微かに見開かれている。
しかし、すぐに視線は下に落ち晃広から顔を逸らした。
晃広なんか存在していないような、そんな態度だ。
「……お前、一条か」
「………」
微かに頷いたのを確認して、晃広はそのまま部屋を出た。
これでもうルームメイトを確認した。そして帰ってきているところも見た。
これ以上藤堂に何か言われる筋合いはないだろう。
あまり絡まれないようにするための最低限度の接触は必要だ。
自分のやるべきことを終えてさっさと部屋を出ていった晃広は、水色の目がジッと背中を見つめていた事には気が付かなかった。
次の日の放課後、晃広は再び渡り廊下に座っているルームメイトを見つけた。
傍らには竹刀が置かれており、相変わらずぼうっと空を眺めている。
「気になっちゃう感じ?」
窓からその様子を眺めていた晃広に声をかけてきたのは、同じクラスの大野晴翔だった。
出席番号が晃広の前である晴翔は、クラスでも騒がしい方の生徒で晃広にも変わらず接していた。
「あそこにいるやつ、気になるんだろ?海崎も何かに興味持つことってあるんだな」
茶化すような態度の晴翔は海崎の肩を組み、窓の外を見下ろした。
「あいつ、隣のクラスの一条湊。常に一人でいて誰かと話してるとこなんて見たことねぇな。俺、声も聞いたことない」
聞いてもいないのに話し出した晴翔をよそに、晃広はもう一度渡り廊下を見た。
風に揺れる金糸は太陽に輝いているように見える。
あの綺麗な水色は残念ながら見えていない。
「一条、なぁんか色々噂あるらしいぜ。俺よく知らないけど」
「噂好きのお前でもか」
「面白そうな噂なら好きだぜ?でも、一条のはなんか違うだろ」
近くに女子高でこんなことがあった、同じクラスの奴に彼女ができたなど、情報屋かよと思うほど情報通だった。
そんな晴翔でも、晃広のルームメイト、湊の情報は詳しくは知らなかった。
「一条にまつわる噂は、面白くない」
いつもあっけらかんとしている晴翔には珍しい低い声だった。
顔を上げた晃広につられるように、晴翔は肩に回していた腕を外した。
「あ、そうだ、今日飯一緒に食おうぜ!竹田さん今日は唐揚げって言ってたぜ」
いつも通りのテンションに戻った晴翔に、晃広は隠さずため息を零した。
「……飯くらい静かに食わせろ」
「まぁまぁそう言うなって、お前いつも静かに食ってんじゃん」
問答無用で引っ張られた晃広は、そのまま寮まで引っ張られていった。
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