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体育祭も終わり、日常が戻ってきた。
体育祭で俺は自分の気持ちを自覚したわけだが、
自覚したからといってどうこうしようとかそういうのはなくて、
ただ初めて抱くこの感情を自分の中で飲み込んで、飲み下して、理解しようとするのに必死で、自分でも扱いに困っていた。
あれから何度もこれは恋じゃないのではないかとも考えたけど、
上月のことを考えると死ぬほどドキドキして、なのに幸せで、
顔見れば胸がぎゅっとして、触れたいとか触れられ…たい、とか…思って……
何度否定してもこれは世間一般に言う恋でしかなかった。
「これからも俺だけみてろよ」
強引な上月の言葉通り、
俺はお前しか見えないよ……
はぁ、と熱っぽいため息を一つ
そして、体育祭から何かが変わったか、と言われると…
「あ、橘!足大丈夫か?歩きにくいだろうから荷物持ってやるよ。ちょうどさ、今度の会議のことで相談したいことがあってさ」
前方から女子に囲まれた上月が近づいてきて、俺に気づいて駆け寄ってきたかと思えば、荷物を持たれて肩をがっちり掴まれる。
「いや、別にもうだいじょ…」
「ん?足痛む?ほら、肩貸してやるから」
「え、あっ、ちょ…っと、おい!!」
肩貸してやる、じゃなくて肩捕まえられてるんですけど…!
そう、変わったことといえば、上月と2人っきりになる時間が増えたことだ。
****
「おいこら!またかお前!!」
上月と学校内で会うと、ドキドキする暇もないくらいの速さで、人気のないところに連れ込まれるのだった。
これが初めてではない。体育祭が終わってからかれこれ十数回だ。
「足、もう痛くない?」
「だから大丈夫だって何度もそう言って…」
最初は俺の足を気にしてのようだったが、だんだん趣旨が変わってきていた。
「つか、腕離せって…ンンッ…!?」
……そう、連れ込まれた後は、こうやって決まって唇を奪われるのだった。
「っ…ぷ、は……ば、かぁ…っ」
微かな理性がなんとか働いて、キッと反抗の目を向けるのだが、
「腕離したら、逃げそうだからやだ」
顔を擦り寄せてくる上月。
こういう時の上月は駄々をこねる子供みたいで、大抵俺は可愛さに絆されるのがオチで、
「…………に、逃げないから…」
…甘やかすような言葉を紡いでしまうのだ。
掴まれていた腕が解かれたと思えば、こつりとおでこを付き合わされて、至近距離で目があった。
ち、近い…!!!!
ドッと心臓が変な音を立てるのがわかる。
体育祭からこれまで以上にやたらと距離を詰めてくるこいつに、平常心を保とうとするのにこっちは必死だった。
「あ、のっ…あの女子たち…ほったらかしてきて、よかったわけ…?」
ボソボソと質問を紡ぐのが精一杯だった。
上月の取り巻き女子たち。
いつも上月は複数の女子たちに囲まれて、胡散臭い笑顔を振りまいているのだ。
前はそんなの全然気にならなかったのに、
今はその光景を見るのがなんだかモヤモヤして、目を逸らしたくなるのだ。
「んー…?お前のが大事
…って言わせたいのか?」
「ばっ!?ば、かじゃないの!?」
カカカッと、顔が熱くなって、上月を一発叩こうと手を振り上げるが、その手をまた上月がぎゅっと握った。
「大事だよ、お前のが」
余裕ありげに笑う上月が俺にまた1つ大きな爆弾を落としていく。
指先にキスしながら、極上に甘いセリフ。
そんなのもうなにもいえなくなるにきまっている。
ずるい………
「…なあ、もう一回キスしていい…?」
「っ!」
喉の奥がキュッとなって、詰まる息を飲み込むのが精一杯で何も言えない。
「はーる……ちゅーしていー…?」
そんな俺を見かねて、甘えるような、強請るような上月の囁きに俺は首をコクンと小さく縦に振るしかなかった。
こいつには全然敵わなくて、
甘い甘い罠に捕まってしまえば、
なす術なんて何もないのだから。
死ぬほどドキドキしている俺をなだめるように上月は優しく唇を重ねた。
ちゅ、と触れるだけから始まり、
次にちゅぅっと吸い上げられるようなものになって、
導かれるままに舌を出せば焦らすようにチロチロと絡まって、
最終的にはお互いの唾液を交換するかのように深く交わった。
「ん…ぁ…はぁ…」
キスが終わった後も、心地よい感覚に頭がぽわぽわする。
余韻に恍惚としていると、もう一度唇を奪われそうになる。
キーンコーンカーンコーン…
…が、大抵は予鈴が終了の合図を告げる。
「お、おしまいっ…!」
切れかかっていた残り少ない理性を取り戻す俺。
ぐいっと上月を退けると、毎回不服そうな顔をしながらも上月も渋々教室へ戻ろうとするのだが…
踵を返して歩き出そうとすると、くんッと後ろ袖を引かれた。
「ちょ、離せ…」
「…今日はこのまま授業サボろ」
今日はひどく往生際が悪い。
上月の目を見ると情欲がチラついているのがわかって、自分の背中がぞくっと粟立つ感覚を覚えた。
た、食べられる…っ
そう、本能的に察する。
「だ、だめだってば…!テスト期間近くてわりと俺やばいんだから…」
自分を律するように突っぱねると、むすっとしながら上月は歩き始める。
「……次、なんの教科」
慌てて追いつくとぽつりと上月が話し出した。
「え、っと…うちは数学…体育祭とかでばたばたしてて、数学苦手なのにあんまり対策できてなくて…」
体育祭が終わって日常が戻ってきたとはいえ、期末テストが迫ってきていた。
忙しさを言い訳にはしたくないが、日々忙殺されて準備ができていないのは事実であった。
「そんなんじゃ、俺に一生勝てねえなぁー」
「うっ…今から頑張って、今回は絶対勝つっ…!!」
今でも、こいつが成績1位で、俺が万年2位状態は抜け出せていなかった。
上月からの挑発に、なんとか頑張らないと、と気合いを入れ直す。
「じゃ、勝負な」
「う、ぇ…?」
……勝負?
「お前が勝ったら、俺はお前の言うこと1つ聞いてやる。そんで、お前が負ければ、お前が俺の言うこと1つ聞く、どう?」
言うこと1つ聞く…って…
一瞬にして、人様にお見せできないくらいやらしい光景が脳内を駆け巡った。
「い、いやだ!!」
こいつの言うこと聞くなんて、危険すぎる!
「ふーん、勝つ自信ないかぁ、じゃあしょうがないよな」
「んなことはないけどっ!!」
キッと言い返した瞬間、しまった、と思った。
「んじゃ、決まり。やろうぜ勝負。次の期末楽しみだなぁ〜」
ニッとくろーい笑顔で笑った上月に俺は絶望するしかなかった。
ああ、神様、俺はどうなってしまうのでしょうか…
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