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期末テストが終わって、終業式まではあっという間だった。
外はセミが盛んに鳴いていて、夏を感じる。
もう夏休みだ。
今年の夏休みもほどほどに遊んで、ほどほどに勉強して、のはずだった。
だけど、違った。
生まれて初めて好きな人がいる夏休み。
学校だと毎日会えるのに、休みに入ればそうもいかない。
その分、会える特別な日、夏祭りの約束が待ち遠しくてたまらない。
ふと頭の中を占有している人物を盗み見る。
終業式のあいさつとして壇上で話すあいつは悔しいが今日もかっこいい。
そう感じると同時に、壇上のあいつを熱っぽい視線で見ている人たちの多さに気圧される自分もいる。
…夏休み、もっと2人で会えたら…いいのにな…
ぼんやりとそんなことを思う。
ぐるぐると思考を巡らせているうちに、終業式がいつのまにか終わっていた。
****
今学期最後の生徒会の仕事であるホールの片付け
「ふう……」
それも終わって、解散
大人しく教室に戻ろうとすると
「っわ!?」
後ろをクンッと引っ張られた。驚いて振り返ると、上月が裾を引っ張っていた。
「上月!」
「おう」
「な、なに?」
突然のことに煩く鳴り響く心臓
それを抑えるように、この行為の意図を探る。
「スマホ、出して」
「へ…?あ、はい…」
訳は分からずにスマホを出すと、いつのまにか俺と上月は連絡先を交換していた。
「えっ…ええっ…!」
その状況にやっと意識が追いついてきた俺は連絡先の欄に並んだ上月の名前を凝視した。
「なんだかんだ交換してねえなーって思って。今度待ち合わせする時もそれじゃ不便だろ」
「あ、う、うんっ…そだな…」
…やば
上月の連絡先がスマホに入ってる…
嬉しさに顔がにやけそうになるのを必死に抑えて返事をすることに努める。
「…俺の声聴きたくなったら、電話しろよ」
そう油断していると、耳元で囁かれてバッと慌てて距離を取った俺
「なっ…なっ…!!」
それをおかしそうに上月は笑って
「また連絡する」
とひらひら手を振りながらホールを出て行った。
「くそ〜〜っ……」
いつも何枚も何枚も上手のあいつにドキドキされっぱなし。
悔しいのに…
「…声なんて…いつでも聴きたいっつの……」
的を得たからかいに俺はまた引っかかってやまないのだった。
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